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 嗚呼、私が一体何をしたというのだろうか。 なぜこうも巻き込まれなければいけないのだろうか。 さては私は巻き込まれフラグでもあるのでは無いだろうか。 そう思ってしまうような状況下に私はいた。


 今思えばオールマイトが校門の方へと移動した時別の出口から帰ればよかったのだ。 でも私はめんどくさくて別に大丈夫だろう、と 謎の自信のまま校門へ向かった。 もちろんオールマイトがいても素通りくらいできるだろうと思っていたからだ。そうじゃなきゃ校門から帰ろうなんて思わない…と思う。正直遠回りが嫌だったから、っていう単純な理由なのだが。
 校門に向かうと、前方にオールマイトの大きな体が見えた。奥には…爆豪? 手前には…あの腕…出久か。 というか出久はさっさと帰って寝た方がいいのでは…?

「…あ、希沙…さん」
「さっきぶり。 …どうしたのあれ」
「んー…まぁ、いろいろあってさ」

 うわ、すごい誤魔化しの下手さ… バレないようにはしてるというのは伝わってくるが、あまりうまくない。騙される人は騙されるであろうものだな。

「…(というか、私がこの場にいていいような雰囲気一切無いんだけど…)」

 そう思い、さっさとその場を離れようとした時 出久が私に声をかけてきた。なんでだ。というか君は早く家に帰ってゆっくりしたほうがいいと思うよ
 出久の姿を改めて見ると、両腕ボロボロで 健康なんて言葉絶対合わない姿だ。というか教室飛び出しただろお前。なんも持ってないし。

「…あ、えっと、もしよかったらなんだけど一緒に…」
「……ごめん出久。 私早く帰らないといけないんだ。 それに、私なんかじゃなくて麗日さんとか天哉が待ってると思うよ。ありがたいけど、ごめんね」

 そう言い、出久に背を向けさっさと歩いて学校から出て行った。
 …正直 出久には悪いと思ってる。本当は 早く帰らないといけない、なんて特に理由はない。ただ…今日1日で感じたことがありすぎた。 ヒーローになる それが当たり前のような生活をしてきたようなみんな。 憧れを持って、今までそれを捨てずに育ってきたような人ばかりだった。


「…ただいま」
「おかえりー! ご飯?お風呂?」
「……風呂」
「追い焚きしておくねー!準備してきてー!」

 相変わらずリビングから大声で話してくる兄。 面倒とかじゃなくて多分家事してるんだろう。
 親がいないので、家事全般兄がやっている。料理は苦手なようだけど、それ以外はよくしてくれている。 そんな兄に感謝をしながら風呂へと向かった。



「はぁぁぁ……。」

 風呂に入りながら溜息をつく。
 明日は轟焦凍君に礼を言わなければいけない。 ああ、なんで私はあんな場所にいるんだろう……そう思ってしまう。 一人だけ、私だけ、ヒーローになるのを諦めている。オールマイトと話し、その勢いでヒーロー科を選んだようなもの。
 一人だけ浮いているような気がしてしまう。 やはり、生半可な気持ちで挑むのは よくなかったんじゃ……

 一人で考え込んでしまう癖は治っていない。 自己嫌悪してしまう癖も治そうとは思うけど、そうはいかない。
 ……ヒーロー 世間が絶対的に負けないと勝手に思っているそんな存在に私はなれるのだろうか。ヒーローは 勝てて当たり前と思っているような人たちのヒーローになれるのだろうか。


「……ヒーロー、か…」



 また私は 諦めかけている


ー帰りー


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