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 下校時
 雄英に行くことを私の唯一の友人に伝える


「希沙雄英行くの!?」
「うるさい。……まぁレベル的にも合ってると思ったからね」
「うっそー………ヒーロー科 行かないの?」
「………」


 もうヒーローへの道は諦めた。結局弱い自分がここにいる限り、無理だろう。
 目の前の友人はそれをわかっていながら、そんな言葉をかけてくれる。 私でもわかる 良き友だってことくらい。 でもそれがわかると余計自己嫌悪してしまう

 結局友人には返事をしなかった。 それを相手もわかっているので、深く追求はしてこなかった。

 途中で友人と別れた。 いつもなら別れた先の交差点で兄と合流するのだが、今日は集会があるらしく来れないと朝言っていた。

 前を見ると、信号が赤に変わった。ああ、引っかかってしまった。
 ついつい視線が近くにあったゴミ捨て場にいってしまう


「……なんで、こんな個性なんだろうね」


 そう呟いた時、突然前方から子供が飛び出してきた。ものすごいスピードで
 おそらく3歳か4歳の幼い少女
 幸い車は来ていないので、そのまま私へ突っ込んでくる。

 一瞬の出来事で頭が回らなかったが、周りに車が来ていないことが確認できたので正面で受け止める。

「…っ、げほっ ……大丈夫?(予想以上の衝撃……)」
「ふぇ、ままぁぁぁあ!!!」

 受け止めた次は泣き喚かれる……か。 勘弁していただきたい。 こっちは進路で悩んでいる最中なんだ。
 悩んでいると母親らしき人物がこちらに向かって走ってきた。

「ほら、ママが来たよ」
「……ひっ、いや いやっ ままじゃない!いやいやいや!!」

 様子がおかしい……その子をよく見ると所々擦り傷や、打撲痕がある。
 虐待、なんて考えが浮かぶが「ままじゃない」という発言からして それは違うのだろう


「……あなた この子の何?」


 そう言ったが、相手は笑顔のまま道路の真ん中で突っ立っている。
 この時 私は既にコイツが何者なのか察しがついてしまっていた


「あはハは 失敗失敗……人がクるなんて……」


 そして目の前の女性はどんどんドロドロになっていった。ついには水のような液体へと変化してしまった。
液体なのに声を発せられるあたり、これがコイツの個性なんだろう。
ああ、なぜこんな事に……。


 これが人生初めて【敵】と遭遇した時だった。



ー初敵ー


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