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 今私は猛ダッシュで走っている。何故私はこんな状況になってしまったんだ。 記憶を辿りながらそんなことを思った。


 テスト後 色々雑務やなんやらをやり終え、身支度をして下校しようとしていた。 そこで爆豪勝己がいたので、何故舌打ちをしたのかもう一度聞きに行った。

「何故舌打ちをしたの?」
「……」
「私何かした?」
「…だぁっ!うっせぇな!」

 まとわりつく私にイラついたのか、階段を上ったり下ったり、曲がり角で撒こうとされた。 しかし私も食いさがるわけにも行かないので、必死についていった。 爆豪勝己が階段を上ったので、私も追いかけようとして……こけたんだ。とっさに手で爆豪のズボンを掴んで……それから……

「……殺す」
「事故!!事故だから!!わざとじゃない!」
「コロス」
「見てな……いとは言えないけど、わざとじゃない!!」
「ブッコロス」

 そう。掴んだまま倒れたので、見事に下げてしまったんだ 爆豪のズボンを。わざとじゃないので、怒らないで頂きたい。あと手を爆破させるのもやめてほしい。

「べ、べつに黒猫なんて見てない!!……あ」
「……死ねぇぇええ!!!」


 ……そして私は何故走っているのか、全貌を思い出した。 ああ 見てしまったんだった。黒猫が描かれていた爆豪のパンツを。何故クラスメイトのパンツ(男子)なんて見なければいけないんだ。しかも相手は爆豪 これは生死に関わる。
 私は必死に走った。前を見ると、職員室があったので、滑り込んだ。もちろん後ろなんか見ていない。後ろを見た瞬間死ぬのだろうから

「ぜぇっ、ぜぇっ、じ、しづれいじます……!」
「…!?…塵岡…ちゃんと」
「相沢先生!!!それどころじゃないんです!!助けて……!」

 周りの先生がなんだこいつは的な目で見てきた。相沢先生もイマイチ状況が理解できていないようだ

「出てこいゴラァ!!どこだァ!」

 職員室に入ったことを知っていないのか、廊下で叫んでいる爆豪

「…殺される……っ!」
「あー……」

 状況を把握した相沢先生は頭を掻きながら面倒くさそうに「何で爆豪が怒ってんだ」と私に質問をしてきた。

「事故りまして、爆豪のズボンを下ろしてしまいました。なので追っかけられてました。」
「はぁっ!?……」
「事故です。」
「……」
「……」

 その後職員室で待機できた。やっぱり相沢先生優しい……それにゴミもくれた。 餌付けされてるとか一瞬思ったけど、別にそれでも構わないので美味しく頂いた。お腹空いていたし丁度良かった。
 しばらくして爆豪の騒いでいる声も聞こえなくなっていった。

「もうさすがに帰ったと思うぞ」
「あ、はい。すいませんでした」
「……ああ、今後はこんなことがないようにしてくれ」
「はい……事故には気をつけます…」

 事故は悲惨な目しか会わないことは初めて敵と会った時から心に刻まれている。 はぁ、ついていないな……
 そんなことを考えながら靴を履き替えて、校門へ向かう。次から天哉と帰ろう。一緒に帰らせて貰おう。
 そう決意したと同時に、多分無理だなという考えも出た自分はどうしようもないと思う。


ー事故ー



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