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 平和な朝 平和な通学路。そんな場所に来るのは久々だった。 殺し屋の自分からしてみれば違和感しか感じられなかった。

 依頼を受け、理事長サンと防衛省の人と話をしたが、どうやら小卒で戸籍もあるよ、といったら特例で入学していい、と言われた。流石にこの歳で中学生かー、と考えはしたが、小卒だし別に暗殺標的と一番身近にいられるので結局OKを出したのだった。小卒なのは諸事情、というやつ。
そもそもこんな仕事をしているのだからそんな人はざらにいるし、その一部でしかない。殺し屋なんて、そんなものだろう。

 戸籍上の設定を思い出しながら通学路をのんびりと歩く。確か男にした気がするな。この間米の方で女の戸籍を使ってたから、こっちのは男な気がする。
 元々中性的に捉えられるような姿…というより変装もできるし、どっちでもあまり関係がない。戸籍は男だから軽く男装してるけど、女ってバレても別にいいや。今回は不利になることないから。確かほぼ元々殺し屋になる以前の状態と酷似した戸籍設定にしたはずだから、かなり楽。……一つだけ懸念点があるけど、今んところは大丈夫だろう。

 ……昨日防衛省の奴らが話していた、超生物と言う説明を思い出す。
 これでも殺し屋16年やっている。自分は裏では程々に有名になってしまった。世界的に有名とはまではいかないが、裏事情を知っている人は知ってる可能性は高い。あまり自分で言うのもなんだかな……
 金にはさほど困っていないから賞金に興味はないが、……お金はいくらあっても困らないしね!

何より、その超生物が気になる。

「待っててね、センセー。」

 その日、初めてE組の校舎の校門に立った。


ーーー


 E組教室の扉前。

「…あ、ゼリフル買ってくんの忘れた…」

 いつも忘れないんだけどな……、とポケットから小さいチョコレートを取り出して口に放り込む。ゼリーフルフルという飲み物は降ると中身がゼリー(っぽく)になる飲み物。この世の飲み物で一番といっていいくらい好きだけど、またにトチ狂ったような味を販売していてそれもまたクセになる。

 無いものは仕方がない。ここの校舎は自販機なんてないから飲むためには先程登ってきた山道を戻らなければいけなくなる。既にここにくるまで色々と本校舎との格差を味わっているあたり、あの理事長サンは何かしら難があるな。買いに戻るのはめんどくさいな、と考え、大人しく教室に入るため扉に手をかけた。

 扉を開けると、ガラララと現代であまり聞かなくなった音がなる。なんだか懐かしい気がするな。しかし時刻は完全に授業中。そんな中視線が自分に集中する。こんなに大勢から見られるのの久々だなぁと呑気に考えたが普通に宜しくないなこれ。
 しかし、その考えも教卓のところにいる謎の生物に釘付けになり飛んでいった。 丸い頭 うねる黄色い触手 どう考えても人ではないということが一目でわかった

「おや、君は赤青君で間違い無いですね?」
「…どーも。センセー。」
「全く、初日から遅刻とは……。皆さん、編入生の赤青君です。自己紹介を」

 始めてくださいと言わんばかりに先生の触手がクネクネと動く。あまり乗り気はしないな、と思いつつ口を開く

「初めまして。赤青 なまえ です。あー、よろしくお願いします」

 パチパチ……とほんの少しだけ拍手が鳴る。こりゃ歓迎されてねーな……。いや普通そういうもんか?どこか冷めていて、完全に疑いの目を向けているクラスを見渡す。
 自己紹介とかよくわからないな、と思いながら先生を見る。とりあえず授業を進めたいって顔してるな。多分だけど。

「赤青君。遅刻は厳禁ですよ。今回だけは見逃しますが、気をつけてください。そうですねぇ……君の席は奥田さんの後ろにしましょう。」
「気をつけますよー。あ、オクダさん誰ー?」

 そういうとオクダさんがそっと手を上げてくれた。うん、可愛いね。仲良くしたい

「ありがと、オクダさん。 えー、と これからみなさんよろしく」

 そう言い、オクダさんの後ろの席に座る。 あー、今後の生活どうなるんだろうなぁ……。気になる人もいるし、平和には終わらないか。

 色々な心境を含め、浅く息を吐き出した


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