「あーつまんねーな、うん」
粘土で作った鳥の背中になりながらオイラは地上を見下ろしていた。
今日はせっかくの非番だったのにいきなりの任務が入るなんてな。久しぶりに自由に芸術活動できる時間だったのによ。
「先輩〜何つまんなそうな顔してるんですか〜?」
「つまんねーからつまんねー顔してんだよ。そもそも、トビ!おまえが1人で任務に行けてたらオイラは休みだったんだぞ?!うん?!」
「まぁまぁ〜。僕1人じゃさみしかったんですよ。可愛い後輩の為じゃないだと思って!ねっ!」
トビの野郎…。楽しんでやがるな、うん。まぁ、いい。なんの任務か知らねーが、オイラの芸術でさっさと片付けてやる。
「トビ、任務の内容はなんなんだよ」
「あー!今日のは簡単っスよ!この先にいる盗賊の処理っス!」
盗賊か…。なんだかすぐおわりそーだな。
「あ!先輩!あれじゃないっスか?!」
あーいるな。大体20人前後はいるな。うん。だが、こんくらいならC1で一気に爆発させりゃ終わるな。オイラはポーチに手を突っ込み、起爆粘土に手をかけた。芸術作品を作り出し、下に向かって放り投げた。
「よし、派手にやって「先輩待った!!!」
「なんだよ、トビ!!」
「見てください!あれ!女の子が捕まってるじゃないっスか!」
トビに言われて下を見ると、確かに女らしき奴が盗賊供の真ん中にいるな。
「あの子助けてあげましょうよ」
「はぁ?!おまえな、オイラ達は悪の組織なんだぞ?!お助けヒーローじゃねーんだ!!うん!」
「えー?!先輩は女の子が可哀想じゃないんスか?!」
可哀想とか可哀想じゃねえとかの問題じゃねーだろ。こいつ暁にいる自覚あんのかよ。
「あーあ…先輩がそんなに非道な冷たい人間だとは思わなかったなぁー…」
「〜っ!あー!わかったよ!女も助けりゃいいんだろ!うん!」
さっすがデイダラ先輩〜!と猫撫で声で喋るトビに苛立ちを感じながらも、オイラは下に飛び降りた。1人の盗賊が気づくとワラワラとオイラの方へ集まってきやがった。
「なんだ、てめーは?殺されてーのか?」
「口の聞き方には気をつけるんだな、うん」
さっき投げ捨てたC1はこいつらの近くに待機させてある。いつでも爆発できるぜ。…だが、先に女の回収だな、うん。
「トビ、おまえは女の回収してこい」
「わかりました〜!任せてください〜!!」
さて…オイラの芸術見せてやるか。
「いくぜ、…喝っ!!!!」
ドドン!ドン!ドン!
ーーーーーーーーーー
「これだけで終わりかよ。つまんねーな。うん」
まだC1しか使ってねーぞ。これじゃ、トビだけでも余裕で勝てたな。
「せんぱぁぁぁああい!こっちこっち!」
「!…今行く」
ダダダダダダダダダダダッっ、!
「は?」
「〜っ!!デイダラ君!!!」
ギュウッ!
女はトビの方からすごい勢いで走ってきてオイラに抱きついた。なんなんだよ…いきなり。だが、顔を見てオイラは驚いた。
「おまえ…捺?」
「やっぱりデイダラ君だ!覚えててくれたんだね!…嬉しい」
「先輩、その子知り合いだったんスか?あ、もしかして…」
仮面つけてても中でニヤニヤしてんだろうと予想がつくぐらいのなめた声しくさりやがって。
「あ、どうも初めまして。デイダラ君の嫁です」
「…はぁ?!」
「やっぱりい〜〜〜!先輩ったら、興味ないフリしてやっぱりちゃんと女の子に興味あったんですねぇ〜!」
指の先でオイラの背中をツンツンと触るトビにオイラはかなりのイライラが募る。…とは言ったものの、覚えがまったくない訳ではなかった。
「デイダラ君!私ずっとデイダラ君の事思ってたんだよ。本当に、会いたかった」
「捺、その話なんだが…」
「私もう18歳になったよ。だから、デイダラ君。結婚できるよ!」
「…オイラは結婚できねぇ」
「…え、…」
笑顔で話す捺の顔が一気にさめていく。なんで?と聞きたいんだろうが、きっとオイラのこのマントを見て大体察しがついてるんだろうな。黙って下を向いて顔を全くあげようとしない捺にオイラは続けた。
「オイラは今暁っていう組織にいる。良いことばっかりしてる訳じゃねーんだ。うん。…結婚の約束も、子どもの時の約束だろ?別におまえも律儀にそんな約束守りにこなくても他に…」
「デイダラ君のバカ!!!!!!!」
突然の捺の声に目が点になる。黙ったかと思えばいきなりバカ呼ばわりかよ。
「デイダラ君、何も分かってない…」
「は?分かる訳ねーだろ。何年振りだと思ってんだよ。うん」
最後に遊んでたのは確かオイラが里抜けする前だから約10年前。10年振りに会って分かれっつーほうが無理だ。
「おまえこそ、結婚結婚てはしゃぐのはいいけどよ。意味分かってんのか?うん?」
どーせお気楽にしか考えてねーだろ。その証拠に、オイラの言葉に返事すら返ってこなくなった。
「っ!…捺おい、聞いてん…」
ぎゅっ
「デイダラ君が好き」
オイラの言葉を遮り、捺は優しく抱きついてきた。昔とは違い、身長も高くなった捺の顔はオイラの顔のすぐ側にあった。抱きつきながらもオイラを見上げる捺に不覚にもドキッとした。
「…離れろって」
「嫌。デイダラ君わかってくれないから。わかってくれるまで離れないから」
そう言って捺はマントの上から自分の身体を押し付けた。こりゃ、離してくれそうにねーな。うん。
「…わかったわかった。おまえの話聞いてやる。だから、少し離れろ」
「デイダラ君、私待ってるから」
離れろという言葉は完全にスルーされ、捺は続けて話しだした。
「デイダラ君がやりたい事すべてやり終えて、満足するまで」
「…まだ先だぞ、うん」
「分かってる。でも、ずっと待ってるよ」
なんだよ、こいつ。こんな女らしいやつだったか?くそ。待ってるとか、なんでそんな事言えるんだよ。
「なんでそんな事言えんだよ」
「?…デイダラ君」
グイッ
名前を呼ばれて俯き加減だった顔を持ち直そうとすると、素早く下から伸びてきた両手により下をむかされる。捺の唇が優しく触れた。
「デイダラ君が好きだからに決まってるでしょ」
「おまえっ…なに.してんだ!うん!」
「ふふっ。デイダラ君真っ赤だよ。…って事だから、ちゃんと覚えててね」
そう言って捺はオイラの背中に回していた手を離した。
「デイダラ君、戻ってきたら結婚しようね」
「…生きて戻ったらな、うん」
「生きて戻ってきてね。私の為に」
10年前と変わらない捺の笑顔。その笑顔を見て、オイラはこいつを迎えにこなきゃなと思った。
「そろそろ行くぜ、うん」
「デイダラ君、いってらっしゃい」
捺を里の近くまで送りとどけ、オイラとトビは粘土の鳥で空高く飛び去った。
全てが終わったら約束守りにきてやるよ。バカ捺。
『私、おっきくなったらデイダラ君のお嫁さんになる!』
『オイラも捺のお婿さんになる!うん!』
『約束だからね!!』
(約束だぜ、捺)
(先輩、僕がいること忘れてましたよね。…こっそり撮った写真、後でサソリさんに見せよう〜)