くっそ、今日はいい作品ができねぇ。うん。いいアイディアも浮かばねー。こういう時に限ってトビはいねぇし。
(…捺おせーな)
時計を確認するといつも捺が来る時間になっていた。…が、今日はまだ姿が見えない。何してんだあいつ。
ガラッ
「また今日も来たのかよ。相変わらず暇人だな。うん」
オイラは粘土を触りながらいつもの様にぶっきらぼうに声を発した。でも返ってきた声はいつも聞いている声ではなかった。
「クスッ。誰と間違ってるの?デイダラ君」
捺じゃねぇ。確か同じクラスの…名前なんだったかな。うん。捺じゃないと分かったオイラは後ろを振り向く事もなく粘土をこね続けた。
「デイダラ君、いつも遅くまで部活頑張ってるよね。私尊敬しちゃうな」
「そんなに大したことじゃねーよ」
「つれないなぁ〜。ね、今度の土曜日空いてる?」
なんだこの女。めちゃグイグイくるな。オイラこういう女本当に苦手なんだよな。サソリの旦那の大学見学行った時もこんな女いたんだよな。うん。
「聞いてる?今度の土曜日!」
「…オイラ芸術活動で忙しいんだよ」
「えー、せっかくの花火大会だよ?その日くらい楽しもうよ」
「行かねーよ。そもそも花火なんてこの部室から見えるしな。うん」
「じゃあ私も土曜日きちゃおっかな」
全く引かない女だな。サソリの旦那はこういう女まくのうまいんだけどな。…捺の奴もおせーし。こういう時ぐらい早く来いっつーんだ。うん。
「デイダラ君てさ、綺麗な瞳の色してるね」
「そんなに見たことねーだろ」
「いつも片目隠れてるけど、見にくくないの?」
だめだ。こういう女まじで苦手すぎる。会話になんねーな。付き合いきれねぇ。
「悪いけど出てけ。あんたに構ってる暇ねぇんだ」
「デイダラ君の彼女になれたら両目をちゃんと見れるのかな」
「…聞けよ。出てけって」
「デイダラ君の瞳の色もっとちゃんと見たいなぁ」
見なくていいだろうが。オイラは粘土から手を離し、一度手を洗いにいった。女から離れる為にわざと手を洗いにいっただけだ。これで部室から出ていってくれるだろうと安心した。
「デイダラ君」
グイッ
背後に移動していた女に気づかず名前を呼ばれたと同時に服を引っ張られる。気づいた時には唇と唇が触れていた。
「瞳の色近くで見させてもらったよ。じゃあまたね」
そう言って女は部室から出ていった。その時オイラは気付かなかったんだ。女とすれ違って捺が部室の前にいたことを。