記憶

『前世』という言葉を知っているだろうか。
今の自分が産まれる前の自分の事。
大体の人は自分の前世の記憶なんてないだろう。前世自分は何をしていたか、どんな性格だったのか、どこで暮らしていたのか、わからない事を知りたいと思うこもは不自然ではない。

でも、私は記憶なんていらなかった。
何も覚えていたくなかった。










「捺〜、朝よ〜」

バタバタバタバタ

「もう起きてるよ、ママ」

「起きてるなら早くおりてきなさい!学校遅れるわよ」

時刻は8時20分すぎ。私の学校は自宅から徒歩20分程で着く。授業が始まるのは9時からだけど、先生によっては早めに始まるので今まだ家にいる私は出席に間に合うか間に合わないかギリギリのとこだ。

「ほら、早く行きなさい」

「間に合うから大丈夫だよ」

実際間に合うかわからないけど、心配かけないよう私は靴を履きながら答えた。

「もー!毎朝なんでこんなマイペースなのかしらねぇ…」

「それはママ譲り。行ってくるね」

バタンっ

(…よし、走るか)

ドアを閉めると同時にスクールバッグをリュック型に背負って学校まで走る。これが私の毎朝の流れ。

ママは毎日私がギリギリに家を出るから不思議に思ってるだろうな。本当は朝も6時には起きてるし、準備も7時には終わってる。本当ならこんなに走らなくても学校には全然間に合うのにな。

(…あと10分…間に合うかな)







キーンコーンカーンコーン

ガラッ!

「…はぁ、はぁ、間に合った…」

「あ!捺!!おはよ〜!!」

私の姿を見るなり、抱きついてきたのは親友の美鈴。先生の姿がまだ見えないのを見ると、今日はセーフかな。

「捺本当に朝弱いよね。私電話で起こそうか?」

「朝弱いわけじゃないから大丈夫だよ。ちゃんと起きて準備も早く終わらせてるから」

美鈴はいつも私が朝遅いことを心配してくれている。150センチという小さな身長なので、抱きつかれると小動物が寄ってきたように癒される。

「捺が来ないと私1人で暇なんだからー」

「あははっ、ごめんごめん」

「笑い事じゃないんだから!…あ!」

無邪気に笑っていた美鈴の頬が一瞬にして赤くなり、目線は廊下の方に向いた。移動教室で移動する上級生の姿。その中にいる美鈴の目線の先の人物に目を向ける。
そして黒い私が顔を出す。

(絶対に殺してやる)

目線の先の人物に対しての黒い感情。しかし、美鈴が負ける感情は私のものとは間逆のものなのだ。

「…デイダラ先輩…かっこいい…」

「……」

「捺いいなぁ…血は繋がってないとはいえデイダラ先輩と兄弟なんて…」

「…美鈴、あいつはやめときなよ」

「もーまた捺は!あんな素敵なお兄さんの事なんでそんな嫌いなのかなー、あ!先生きた」

ガタガタっ

窓際の自分の席に着くと、すぐにLINEのバイブが鳴る。

【またデイダラ先輩の相談乗ってね*】

美鈴のメッセージに私は笑顔のスタンプだけを返信した。そしてふと思い出す。



ーーお姉ちゃん、助けてーー


あの時の声を忘れる日なんてない。

ーー芸術は、爆発だーー


絶対に許してはいけない。











美鈴を、、、妹を殺した奴なんて。