名前なんて興味ないよ




陽が沈み、女の子たちとの幸せな時間も終わりに近づいたころ、ビアンカがそっとクロナの耳元で恥ずかしそうに囁く。



「クロナさえ良かったら、その……今夜、どうかしら?」

「もっちろんさー!」



二つ返事でOKしたクロナはビアンカの手を取って光煌く夜の街へと飛び込んだ。






しばらくして、ビアンカは冷蔵庫にあった水を取り出して、シャワーから出てきたクロナへ手渡す。
受け取ったクロナは勢いよく水を飲み干し、コップをビアンカに返してベッドに腰掛ける。
クロナの傷だらけの体を見て、ビアンカは悲しげに顔を歪めて聞く。



「ねぇ、クロナは白ひげの船に乗ってるのよね?」

「ん?まぁそうだよ」

「……怖くないの?」

「心配してくれてるの?優しいなァ、ビアンカちゃんは」

「ビアンカでいいわ。だって、海賊なんて怖いだけじゃない……」

「まァ、そこは命のやり取りをしてるからねェ。いつだったかな、誰かが言ってたんだよね。“殺していいのは殺される覚悟のあるやつだけだ”ってね。つまりアタシらはみぃんないつ殺されたっておかしくない中で生きてるわけだ」

「…………」

「端から見りゃ、頭おかしい連中だろうね。アタシはその中でももっと頭がおかしい部類のニンゲンだよ。命のやり取りが楽しくてしょうがない。ビアンカちゃんなら分かってくれると思ったんだけど?ねぇ、殺し屋さん」

「!?……知って、いたの……?」

「これでもアタシ、殺し屋まがいなことやってたからね。同業者は匂いで分かるんだ。お茶会の時も毒入れたり、後ろから別の人間が狙ってたっしょ。それに、さっきくれた水、睡眠薬入れてたでしょ。鼻はいいんだよね、毒も効かないし」

「、分かっていてどうして……」

「だって、ビアンカちゃん可愛いからねぇ!」

「クロナ……変わってるわ。一体何者なの?」

「ただの可愛い子大好きな通りすがりの海賊だよん。で、どうする?」



クロナの問いかけにビアンカは張り付けた笑みを消して言う。



「正体がバレた殺し屋の末路なんてたかが知れてるわ……それに、私は貴女を殺したとしても自由にはなれないもの……」

「へぇ?何、弱みでも握られてんの?もしくは……身体ん中に爆弾でも?」

「そこまで分かってるのね。」

「音が聞こえたからね」

「敵わないわ……。クロナ……、貴女が好きよ。貴女だけだった。私を私として見てくれたのは。だから死ぬなら貴女の手で……どうか、お願い」

「……まァ可愛い女の子の頼みだしねぇ。苦しまない様にしてあげるよ」

「ありがとう。それとね、私の名前ビアンカじゃなくて……本当の名前は、」

クロナはビアンカの言葉を最後まで聞くことなく、彼女の首を落とした。

「ごめんね、アタシ、姉貴と違ってそんなことに興味無いんだ」



噴き出す赤い血を浴びながらクロナは冷めた目でビアンカを見下ろした。



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