私たちの選んだ道

 コールとヴァニタス、それから各自ソラを見つけるため調査をしている面子は、定期的にレイディアンドガーデンにある賢者アンセムの城で報告や情報共有を行なっていた。
 今日もその報告会なのだが、コールとヴァニタスは一足先に城に着いてしまい、お互い分かれて用を足して、場内をフラフラすることにした。コールは軽々しいステップで見知った城内を歩き回れば、ふと見覚えのある影に足を止める。
「おーい!ヴェンちゃーん!」
 金髪に吸い込まれそうな青い瞳、左腕に鎧の一部を模した飾りで、コールはその人がロクサスではなくヴェントゥスだと即座に見抜き、声で手を振れば、影はこちらを向いて「コールー!」と呼び返して笑顔でこちらに駆け寄ってくれる。まるで人懐っこい犬のようで、動物が好きなコールは思わず頬が自然と緩んだ。
「コール、もう来てたんだ!早いな」
「うん、まぁここがホームタウン…っていうか拠点みたいな感じだから昨日のうちにはもう着いてたよ」
 コールはわざとらしく「ヴァニちゃんも勿論一緒にね」と付け足すと、ヴェントゥスは何も言えずに口をつぐんだ。元はと言えばヴァニタスはヴェントゥスの中にあった純粋の闇であり、ゼアノートとの戦いまで敵対関係にあった。そんなヴァニタスがいきなりこちら側に来たとなると、ヴェントゥスからしたら複雑だろう。
 しかし、コールはヴェントゥスとヴァニタスが、"兄弟"として仲良くすることを望んでいる。だからほんの少しのいたずら心も許して欲しいと、"先輩"ながらも思っていた。
「…コール、なんか沢山噛み跡みたいなの付いてるけど…動物かドリームイーターでも飼い始めた?」
「えっ」
 黙っていたと思ったヴェントゥスが、コールの身体をまじまじと見てはそんなことを言うものだから、思わず叫びそうになるのを抑える。
 
 それは昨日のことだ。一足先にレイディアントガーデンに着いたコールとヴァニタスは賢者アンセムの城からさほど離れていない場所にある小さな小屋、そこは10年前、ゼアノートがコールを閉じこめるために用意した箱庭だが、ヴァニタスと過ごした思い出の場所でもある。コールはそこを今でも家と呼ぶし、家として使っていた。
 二人はすぐそこに着くなり、久しぶりの我が家に羽を伸ばした。テレビを見てソファで寛いで、他愛もない会話をして。一緒に寝て───こうなった…正確には性行為の末、コールはヴァニタスに噛まれた。もちろん甘噛みなどではなく、きっちり歯型が着いてるし、なんなら場所により内出血しており、赤黒くなっている場所もある。コールはこの行為に対して、毎回止めようとしてるが、いつもされるがまま、彼からの愛を受け止めていた。しかし、それがいつもの事になり過ぎて、彼を否定することが出来なかったのだ。
 結果はご覧の有り様、見えるところにもヴァニタスによる噛み跡だらけで、人目ではっきりとわかる。
 流れ星のように頭をよぎる昨日の出来事にコールは我慢してた口を開けば「うわぁぁぁあん」と子供のように泣き叫び、今すぐその場を離れようと、ヴェントゥスに背を向けては走ろうとするも、「待って」と彼に手首を掴まれてそれは叶わなくて、コールの顔は真っ赤だ。
「あの、その…それってもしかしてヴァニタスが…?」
「あぅ…」
 意気消沈で、小さく頷くコールが俯けば、自ら聞いたヴェントゥスも恥ずかしくなり、思わず彼女の手を離す。「なんか、ごめん」とヴェントゥスも俯けば、コールはその場の空気にいてもたってもいられず「それじゃあ、またね」と今度こそ彼に背を向けて歩き、再び恥ずかしくなったコールは廊下を走り、廊下の角を曲がり、ヴェントゥスの視界からすぐさま消えた。
 「なんだ、自由に生きてるじゃんか」
 自らの半身であったヴァニタスの行動に少し気恥ずかしさがあるが、ヴェントゥスは彼が自分の人生を生きている事に口元を緩めた。


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