暇つぶし程度に降りたったのはソラくんとリクくんの故郷であるディスティニーアイランド。ここに来るのは随分と久しぶり”な気がして波打つ音が心地いい。
最近は機関の勢力が拡大しているせいかディズもナミネもリクも、表立って動くことができず外に出歩く時は撹乱のために機関と同じ黒フード、闇を祓う衣を纏っている。
かくいう私は衣がなくても回廊に入ることができるが、
大丈夫。まだかわいい弟弟子にはバレていない。まだ、知るべきでは無い。
波打ち際で足首まで使って波を蹴り上げて遊べば私の背後で回廊の開く音が聞こえて、覚悟を決める。確かに暇つぶしにここにきた。でも私には目的もあった。
チェーンの揺らぐ音が背後からしてソラと同じキーブレードが私に向けられる
「っ貴方はだれなの?」
「……私よ、コール。予知書の乙女。サイクスやゼムナスから言われているのでしょう。
キーブレードを下げなさい」
フードを脱ぐと彼女の目は見開かれ、向けられていたキーブレードは徐々に力をなくして下がっていく。
そう、私が"こうして予知書の乙女として'シオン"の目の前に現れたのはこれが初めて。今の私は、たまにトワイライトタウンに現れて、シーソルトアイスをお使いついでに時計塔でアイスを食べる魔法使いの少女では無い。
私を見る目とが揺らぎ静かに彼女の身体は震えている。いつもと違う私に恐怖しているのだろうか?困惑しているのだろうか?私が知る由もないが。
「そんなっ…コールが、予知書の…?」
「ええ。悩める子羊のために姿を現したまでよ」
今にも泣きそうで、小さくなったシオンの息を飲む音が、波の音にかき消えてしまう。
人間は、”こうも弱い”それは心を持つ人形も変わらない。
私は二歩ほどシオンに近づくと彼女の弱く、華奢で小さな身体を抱きしめる。
人間と同じように心の宿った者には、選択する権利、いわば生きる権利がある。私はそれを一番よく知っている。それは私が、予知書の乙女"であり、コールというキーブレードマスター、今は魔法使いであり、この身体の元の持ち主が主な原因だが、そこまでの話を知る人物は、この世界にはもう一人しかいない。
「未来は確かに決まっているけども、貴方には選ぶ権利がある…まだ時間はあるわ。」
選びなさい。逃げてでも生きたいのか、ソラの元へと還りたいたいのか。
言いたいことを全て彼女に伝えると、彼女からそっと離れればくらり、と意識が雲がかる。
私もそろそろ時間切れだ。私は"私"に戻らなければ。ただの魔法使いに。
「あれ?シーちゃん?私"なにか…した?」
何も知らない私を、前にいる人形はしばらく空いた口が塞がらずにいたが、すぐにむずがゆくなってお互いに笑い合った。
『鍵が導く心のままに。・・迷ったとしてもきっと鍵が導いてくれるから』