はじめまして勇者様

今日は、大事な客人が来る。それはどんなお客様より大切で、私の、みんなの大切な世界を、きっと変えてくれる存在。
 キーブレードの勇者──。本来なら継承の儀を行わないと握れないものを、手にした少年。一体彼は、私にはもう握れないそれを、どんな顔をして、どんな思いでその鍵を振るっているのだろうか。とにかく今からとても、彼に会うのが楽しみでしょうがなくて、待ちぼうけた私は、お菓子と紅茶をいつもよりたくさん作ってしまった。私は外の騒がしい声に耳を傾けながら、紅茶を啜った。



「コール!」
「コール、久しぶりだねぇ!」
 久しぶりに合う私の可愛い弟弟子のお付きの二人。きっと私の弟弟子が急にいなくなったから心配して飛び出してきたんだろう。初めて会ったのは十年前だけど、彼らは何一つ変わっていない。強いて言えば少し、勇ましくなったかもしれない。
「久しぶりだね、ドナちゃん、グフィたそ…それで?その後ろの子が…?」
 私の言葉に反応するように彼がこちらを向いて、私に笑顔を向ける。私はと言うと、正直びっくりした。だってその顔は、私の大好きで、もうここには居ないはずの"彼"にそっくりだったから。
「俺はソラ! カイリとリク…友達を探してるんだ」
 私はぐっと丸めた手から血が滲みそうなほど握りしめて、泣くのを堪えた。だって彼はヴァニちゃんじゃない。彼はキーブレードの勇者、ソラ。選ばれしもの。純粋な闇たる彼とは、相反するもの。私は普通に接すればいいものの、心がそれを受け付けなくて、今にも色々な気持ちが溢れそうで、思わず口から溢れ出た「ヴァニタス」という吐息のような声が聞こえたのか、反応したようにドナちゃんが、私を心配そうに見上げる。私の長い沈黙にどうやら不振に思ったソラくんは、「大丈夫?」と私の顔を覗き込もうとする。
 あぁ、これじゃあダメだ。大事なお客様に悟られてしまう。
 私はすぐに顔を上げると、直ぐに心を空っぽにして笑ってみせる。
「はじめまして、ソラくん。私はコール。魔法使いコール」
 
 ソラくんは彼ではない。けれど"私たち"の大切な希望。未来への導。どうか貴方たちの旅に幸あらんことを。

「鍵が導く心のままに」


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