おやすみなさい愛しいひと

 夜は嫌い。闇に沈んだ夜空からでは光が通りずらいから。闇は好き。光がなくては闇は存在しないのだから、逆もまた然り。それは今日とて変わらない。
 私を世界から隔離、軟禁するための小さな小屋の一部屋からは夜空から小さな星の光たち届いている窓際に座っては、今にも消えそうな星の光が健気で愛おしい。いつか消えそうだなぁと星を掴もうと手を伸ばしてみるけれも当たり前だけど手は届かない。
「寝ないのか?」
「こんばんは、ヴァニちゃん。今日も星が綺麗だね」
 質問で答える気もない私に、不機嫌そうに鼻を鳴らす彼は、いつも通りの仮面姿…ではなく、黒いツンツンした髪に星のような黄金の目が輝いている。彼は闇だ。ヴェントゥスの中から抜き取られた純粋な闇。
「寝れなくて」
「寝ろ。お前の身体に何かあるとマスターがうるさいからな」
 ヴァニちゃんの言葉に私は目を細めて微笑む。あぁ、彼はなんて純粋で可愛らしいのだろう。彼には心があるのに。彼個人として存在している筈なのに、まるで操り人形のようにゼアノートのおじいちゃんの言うがまま、従っている。
 私は愛しさと、もし彼が、もっともっと彼自身として確立したらどうなってしまうのかという感情で胸が高鳴り、顔が熱くなる。それを悟られないようになんとかしようとするが、身体の熱はなかなか冷めないようだ。もう、どうにでもなってもいいかもしれない。
「じゃあ…一緒に寝てよ。ヴァニちゃんが私と、寝て!!」
「はぁ?!」
 突拍子もないことが口から滑り出したため、ヴァニちゃんは物珍しく驚き一瞬私と同じ桃色に頬が染まった。
 勿論驚きの次に返ってきたのはゴミを見るような目と「なんで俺がそんなこと」というあきれ言葉。私は余計に高鳴る胸を両手で押さえ込めば、「だってぇ」と窓際から腰を下ろして下からヴァニちゃんの顔を見つめる。
「寝れないんだもん。誰かと一緒じゃないと…今ここにいるのはヴァニちゃんと私だけなんだよ? それならもう、分かるよね」
 にこりと笑えば、ヴァニちゃんは「クソっ」といいながら私の手首を引いてベットに引き入れた。彼は直ぐ私から顔を逸らすように外側を向いて布団に潜ったけど、私は愛しい彼の背中を見つめたまま、瞳を閉じ、やっとこさ眠りについた。

(久しぶりに眠るから、今日はいい夢見れそう)
「こいつ、本当に何にも覚えてないんだな…俺の気もしらないで、鈍感な女だ」


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