永遠の箱庭


彼女は悪魔


俺の目の前に現れた乙女は、かつて愛した"彼女"の顔をしていた。もしかしたら俺の気でも狂ったのかもしれないがこの手にかける前の彼女の姿で、愛しいものを見るように微笑む。

「久しぶりね、ルシュ。見ない間にまた顔が変わったのね」
「お前こそ…」
「あら、私は"何も"変わってないわよ」
 
 その言葉に息が詰まり、目を見開くと、乙女は見透かしたように笑って、俺の耳元まで寄ってきて囁く。
「あなたに呪いをかけたの。あなたがもう一生"彼女"に会えないのは可哀想でしょう? だから、私は私の姿が"かつてはあなたが愛した者"に見えるようにした」

「…余計なことを」
「あら、そう? 私からの祝福よ」
 
微笑む乙女は悪魔より悪魔だ。いつもは会おうと足を運んでも上手いこと避けるくせに、こうして会いにきたと思ったら彼女の姿で残酷なことを言う。
 乙女は善でと悪でもない、秩序の具現化。正しくないものにはそれ相応のツケが回ってくる。それを下すのも、予知書の乙女である。乙女は"全て"を知っている。だからこそ彼女に嘘は通じない。

「そう怖い顔をしないで?私たち長い付き合いじゃない」

 そう言って、くすくすと声を出して笑う彼女は秩序の具現化たる 予知書の乙女ではなく、悪魔のようにも見えた。
 

- 2 -

*前次#


ページ: