間話T
夕陽が沈む頃、とあるカフェの奥の方の席で二人の男女が会話をしている。
「お前とアンセム様の謁見の話が決まった」
「へぇ…」
「お前が持ちかけたハナシなのに、その反応かぁ?」
「はぁ……だってわかりきっていた事だもの…今更反応する気もないわ……ところで、貴方は自分の身を心配したほうが良いんじゃないかしら?」
「そろそろか……」
「えぇ、ご察しの通り……どう?昔の級友と手を組めて嬉しい?」
「お前なぁ……その姿でそれを言うかぁ?」
「そう言う貴方が“好き“な姿でいてあげてるのに、何が不満なのかしら?」
「……お前のそういうところってハナシ」
「ふふ、だって貴方がいけないのよ?自分でもよくわかっているでしょう“ルシュ”」
「ここでその名を呼ぶな。誰かに聞かれたら困るからな」
「……忘れたの?今の私は魔法使いよ。人の記憶を消すなんて容易いわ」
「まったく、怖いねぇ予知書の乙女サマは」
「それもこれも貴方のおかげでもあるけどね。この身体を“私“に捧げたのは貴方だものね」
「……」
「あぁ、もうこんな時間なのね。それじゃ今日はこの辺にしましょうか。……謁見の日を楽しみにしてるわね」
乙女が席を立ち、店内を後にすれば一人取り残された男は物憂げに窓の外を眺める。
いつの間にか窓の外は暗くなっており、夕立が来てもおかしくない。この後は城の仕事もないし、それならもう暫くこの店内にいた方がいいかもしれないと、店員にコーヒーのお代わりを頼む。
◾️
「魔法使い……ねぇ」
そう言ってまるで昔のことを思い出すように目を伏せるが、それと同時に外ではまるで男の心情を表すかのようにポツポツと小雨が降り注ぎ始める。
どれだけ“彼女”のことに想いふけても、“彼女”はもう戻ってこない。だって彼女は————。