さようなら、愛教学院

1.
 時が経ち、今や高校一年生となった俺は、父さん....否、御当主サマに無理を言うまでもなく、東成都へ戻ってきた。好きな学校へ受験しようかと、東成都にある高校一覧を見ていると、毎度のこと御当主サマが、我らが愛教会のお偉いさんに頼み込み、愛教学院の推薦枠をとって来たと言う。
 この時は本当に腹が立ち、腸が煮えくり返り、御当主サマに危うくアッパーをかますところで、一つだけ何でも言う事を聞くからと条件を出された俺はしょうがなくそれを飲んだ。俺が出した条件は”義母も一緒に東成都で自分と二人で暮らすこと”を出し、これもまた、御当主サマは渋々了承。義母さんはなんなりと了承した。
 そうして俺は愛教学院の救世主コースに入学式した。
 自宅から学校は遠かったが、都内の電車通学というものは色々新鮮で勉強になった。電車を乗り継いで約三十分かけて、愛教学院に着くことができた。
 だが、それはもう退屈な入学式で、魚の目をした校長先生の長い話を欠伸をしながら聴いていた。
 驚いたのは愛教の生徒の七割は信者だと言うこと、三割は物好きの変なやつと言ったところだ。 愛教ならどんな生徒の受け皿となる。それは真っ白な真実なのだろうかと、考えているところで意識が途切れた。

2.
 入学式が終わり、眠い目を擦りながら自らの教室に戻る。この後はオリエンテーションだろうか?自己紹介があるなら第一印象が大事だというのを思い出して俺は、眠気覚ましに頬を両手で叩く。
「吉田智樹、言いますわ、まぁ気楽によろしゅう.......。」
 なかなか上手くいったのではないかと思い、自然と口元が弧を描いた。それにしても、この”救世コース”というものは人数がいちばん少ないらしく、拍手は所々から音が鳴るぐらいの寂しいものとなった。
 ちらりと周りを見ると皆、目に光は無く、無表情で同じ顔をしていた。それを見て自然と悪寒がした。
(はぁ、そんな顔しなさんな.......大嫌いな家族《狂信者》を思い出すやん。)
 これから一年共に過ごす、大切仲間を、あの家族と重ねてしまう。それが何より俺は怖かった。また、自分だけ除け者にするんじゃないのか、大切な人がいなくなるのでは無いのかとこの時内心震えていた。

3.
 あれから数ヶ月経ち、愛教のたった一人のヒーローとして、ぼんやりとイーターを倒す日々を過ごしていた。この時認可なんてもんじゃ到底ない愛教学院のヒーローの俺はひたすら地域のパトロール、イーターの殲滅を行っていたが、そんな作業的な毎日に、自分がロボットのようにたんたんと作業しているように見えてきた。 
 ある日、ヒーローの統括を行っているALIVEが南地区の月倉町にイーターを集めて討伐を行うと認可を中心に召集がかかった。もちろん、愛教には俺一人しかヒーローが居ないため声はかからなかった。あとから聞いた話だが、崖縁のヒーローが何故か爆弾のようなものを爆破させたとかで怪我が人数人出たとか。
 その話をいて、羨ましさを感じた。
 自分もその場にいたら、入院できただろうか?命を絶つことが出来たのだろうか?母さんに今一度、会うことが出来ただろうか?そのような考えが頭いっぱいに支配されてゆく。
 この箱から解放され、母に会えたら、きっとこの上ない幸せだろう。この箱はあまりにも退屈すぎた。望んだ青春も出来やしない。
 この時から俺の気持ちは決まっており、二年生になるのと同時に転校することを決めており、そのためにも、当主サマには話は通さず、義母さんと話を進めている。
 最初は義母も戸惑っていたが、もともと愛教の信者でもなんでもない義母は「智樹さんはもともと、あの学校に行きたくなかったものね、それで合わないのだから、しょうがないわ。」と親身になって話しを聞いてくれた。今のところ了承は貰えそうだ。
 まだ、転校先の学校は確定は確定はしてないが、目処はつけてある。東地区にある風雲児高校だ。
 風雲児高校は俗に言う不良校であるが、普通の入試ではなく、"一芸"入試が有名である。一芸とはどうやら能力的なものなので、俺は自身の霊能力の読心術で転校試験が受かるのではないかと睨んでいた。

4.
 風雲児高校を人目みようと、イーター出現予報がなく、パトロールが早く終わった日に遠い東エリアへと踏み入った。
 噂に聞くとおり、なんだか空気自体が肌にピリつく。俗に言う治安が悪いというやつだ。自身の愛教のカーキ色の制服が目立つ、とうのも理由の一つだろう。
 風雲児高校に近づく度、風雲児高校の学ランに刺繍が施してる人たちが多く見られる。風雲児におけるこの刺繍は強さの証らしい。つまり、派手でるほど、強いのだ。
 刺繍の細さに見惚れていると、ふと、俺が見ていた虎刺繍を施した人物がこちらを振り向いた。どうやら、風雲児の生徒は感覚が強いらしい。流石一芸入試を突破した抱けはある。
 男と目が合い、お互い石のように固まる。
(あー、めんどいことになってしもうたな…ここはひとつ一走り──)
 痺れを切らしたのは刺繍の主。
「オラてめぇ!何見てやがんだ!!さっきからチラチラとォ!」
「あー、すんません。」
「謝って済むならケーサツいらねーだろーが!ガン飛ばしやがって、何処高だ!!!」
 逞しい血管の浮きでた手の骨を鳴らしていかにも戦闘準備を整えている男に、一瞬読心術を使おうとしたが、ここで目立ってはいろいろと厄介なので勇気をふりしぼり、口を動かせと脳ミソに信号を送る。
「.......勘違いですわ.......その、ただ、その.......」
「なんだァ?一言ぐらい聞いてやるよ」
「その制服の刺繍.......すごいかっこええな、って.......。」
 は?と間の抜けた男は目を一瞬見開いたかと思うと、ガハハと笑い始めた。正直唾が飛んでくるのでやめて欲しい。
「おめー、趣味がいなァ!このかっこよさが分かるとは.......改めて名前なんて言うんだ?」
「愛教学院一年、吉田智樹言いますわ。」
 ほな、よろしゅう。と笑う。愛教にいると、表情筋を使わないため、上手く笑えてるが不安だったが問題なかったようで男もも笑って名乗ってくれた。
「愛教学院のやつがなんで東エリアの風雲児まで来たんだ?」
「転校しようとおもてなぁ、その下見や。」
 そうか、となにやら考え始めた男、数十秒考えた後に、まっすぐと俺の目を見て、肩を両手で掴んできた。男の体温が肩から伝わる。これほど熱心に、何を考えて居たのだろう?
「風雲児にくるなら、お前にこの学ランを受け継いで欲しい。俺の目が確かならお前は"強い"お前が良ければこの学ラン、使ってくれねぇか?」
 そうきたか、と一時停止で頭を悩ませるが、俺も数分でこの綺麗に入っている虎の刺繍を気に入ったし、これも何かの縁かもしれないと思い、思い口を開く。
「そこまで言うなら、別にええけど.......。」
「ほんとか?!」
 ぱぁっと顔が輝く男。その表情は犬のようにも見えた。
 この後、男と約束をした。
 転校初日、この学ランを着ることだ。正直それは周りの反応が面白そうだと思い。喜んで了承した。卒業式の日に男から学ランを受け取るため、男と連絡先を交換すれば、お互い笑って背中を向けた。
 それぞれの道へ、今は前を向かなくては進めないから、俺は愛教に戻るべき、足を進めた。

top

コメント
前はありません次はありません
名前:

メールアドレス:

URL:

コメント:


編集・削除用パス:

管理人だけに表示する


表示された数字: