耳に入る激しいリズムが心地良い。曲に合わせて掛け声を揃えて。ライブ特有のこの一体感がたまらなく好きなのだ。無気力そうに見える彼の力強い歌声が響く度、会場の活気はヒートアップしていく。普段はこんな風に思いっきり声を出して何かを楽しむ機会が無いから、このライブを見に来ることは私にとって唯一無二のリフレッシュする機会となっていた。ライブが終わると各々がその余韻を味わいつつ、高揚感に包まれながら帰路を辿る。そろそろ私も帰ろうかな。
「また来たのですか」
振り向くと、さっきまでステージに立っていた筈のネズさんがそこに居た。
「ばれちゃいましたか」
そう言って私がアハハ、と笑うとやれやれと言うような顔をされた。
「こんな夜遅くまで子供一人で出歩くものじゃありませんよ。特にこの町はどんな人が居てもおかしくありませんからね」
「でも、私だってネズさんのライブが見たいです。これだけじゃ足りない。もっと歌声を聴いていたいんです」
すると、ネズさんは少しボリュームを抑えた優しい歌声を奏で始めた。そのまま背中を押されて、隣りで歌うネズさんと共にスパイクタウンの入口に向かう。あまりジロジロ見ないようにと思いつつも、彼の歌う時だけに見せる優しい表情にどうしても惹かれてしまう。
「どうですか。満足しましたか」
いつの間にか、シャッターの先に9番道路が見える所まで来ていた。
「はい、今日のところは」
「相変わらず強情なやつです。次からは俺がここまで送ってやりますよ。来るな、と言ってもどうせお前は来るに違いありませんからね」
「本当ですか?嬉しいです」
「そこまで笑顔で言われると反応に困ります。それじゃ、俺はもう行きますよ」
ネズさんは後ろを向いて会場の方に歩いていく。
「はい、お気を付けて!」
「それは俺のセリフです」
こちらには背中を向けたまま、手を振りながらネズさんは去っていった。ポカポカと幸せな気持ちで心が満たされる。さて、テントを張ろうか。それとも久しぶりに家に帰ろうか。