#36

年間行事表が配られた。
4月 始業式
5月 球技大会
6月 進路面談@
7月 中間試験
8月 夏季休暇
9月 体育祭
10月 修学旅行
11月 文化祭
12月 期末試験、クリスマスパーティ
1月 進路面談A 大学入試〜
2月 〜大学入試
3月 卒業式、春期休暇

モリモリだ!!!!!
なまえの脳内では全ての行事の前に(煉獄先生と)という文字が見えている。

流石に最終学年、秋から別途申し込み制の科目別講習がある。なまえは英語に素晴らしいアドバンテージがあるので、その分の時間を煉‥苦手科目に費やそう!(セーフ!)

「みょうじ!」
HRが終わりクラスメート達が解散していくなか、煉獄が手招きする。

呼ばれて嬉しい!‥のを隠すように、「何か?」という顔で教壇に駆け寄った。
「嬉しそうだな!」
バレてるー!!!何で!?
「尻尾が見えた!」
クゥン‥

やはり竈門達と同じクラスにして良かった、等と言いながら、教師は紙を教卓に置いた。
"選択科目"と書いてある。

「歴史は1-2年で日本史、3年で世界史を習うのだが、向こうでは履修していないだろう」

大学入試は主に国立(五科目必須)と私立(三科目選択)に分かれるが、それにより地歴公民に特化するか、数学を固めるかを今のうちに決め、選択授業で強化せよ、との事だった。
文系を選択し地歴公民を受験科目にするのであれば、嫌いでなければ歴史をお勧めする、と教師は言う。(何故なら大学や学部によっては政経地理での受験を認めていないところもあるから)

「日本史を選ぶなら選択授業を取って欲しいし、世界史にするのであれば国語の苦手分野に充てるのもいい。」

‥今こんな感想を持つのは大変失礼だが‥こういう受験のディープな話をすると、煉獄先生はやっぱり「先生」なんだなぁと実感する。1年の時の日本史は割りとライトな前半部分だったし、如何せん騎馬戦が多かったので‥何だか新しい魅力を見つけた気がする。同時に、彼は大人で、自分の知らない様々な事を知り、経験してきたのだろうと‥少し遠く感じた。乙女心は厄介である。

検討します!と言って紙を受けとる。日本での大学受験、深く考えてなかった‥けど今の話だと、日本史を選択すれば‥煉獄先生の授業を増やせる。だが考えろ‥惚けて集中できなかったら不利になる。それはあまりに愚かだ。


「ねぇみょうじさん、この後暇?親睦会やらね?」
もうクラスメートが半分くらい下校しているが、男子生徒が声をかけてくる。あぁ、この一味はチャラそうだなぁ‥

‥このクラスメートを疑いはしないが、正直このテの付き合いは求めていない。
というか、まだ煉獄が後ろで板書を消したりして聞こえる位置にいるのに、声をかけないでほしい。彼は興味ないだろうけど!!!

「断る!なまえはこれから帰るからな!」
バーン、と青い髪が視界を遮った。
伊之助ナイス!理由おかしいけど!

「‥何だよ嘴平、彼氏みたいに」
男子生徒はジト目で伊之助を見る。
「そんな浅い関係じゃねェ!!」
やめて!ややこしくしないで!

チラリと炭治カ達を見ると、窓から顔を出して校庭の誰かに手を振っている。助けは期待できない。

「ごめん、まだ引っ越したばかりで段ボール片付けたりしなきゃだから、また今度!」
何とか理由をつけてごまかす。
「あ?段ボールならこの前俺等が片付けただろ」
貴方は敵なのか味方なのか!!!!!

「え!?嘴平、家に行ったの!?」
そこに食いついちゃった!?

なまえは頭を抱える。何より、この一連を煉獄に聞かれているのが嫌だ。もう絶対に、絶対に迷惑はかけられない。面倒臭いと思われたくない!

その時。
「俺も行ったが‥文句があるのか」
ヒヤッ‥と、空気が冷えた気がした。

静かな声に、男子生徒はビクッとして振り返る。
「い、伊黒先生‥?何故ここに‥?」

圧が凄い。この化学教師は、華奢な体格をしていながら後ろに龍が見える。気がする。

「俺が副担任だ。」
「何故手に催涙スプレーを!?」

男子生徒達はそそくさと帰っていった。
副担任!だから迎えに来てくれたのか!

「伊黒先生、宜しくお願いします!」
恐らく助け船を出してくれたのだが、確証が無いので頭を下げるにとどめた。
「‥‥チィッ」
舌打ちされた!!!

「‥これを持ち歩け。」
シャランと、綺麗な音がしてチャームの付いたきれいな小瓶が渡される。
「これは‥?」
「揮発性の催涙液だ」
「え?」
何言ってんの?この綺麗な人?

教師は固まるなまえを面倒臭そうに一瞥すると、白衣を翻して帰っていってしまった。

善逸が駆け寄ってくる。
「ちょっとォォあの人俺のなまえちゃんに何プレゼントしてくれてんのォォ!!!」
「目に入ると痛いやつ」
「聞いてたよォォー!!中身じゃなくて!」

キィー!と怒り狂う善逸を尻目に、鞄の取っ手部分にチャームを取り付けた。非常に物騒だが、伊黒先生と鏑丸くんのご利益?がありそうで心強い。

「帰ろ、炭治カ!」
「うんなまえ、帰ろう!」
何も知らない炭治カはにこにこと寄ってくる。新しいマンションも場所は違うが炭治カ方面だ。また一緒に帰れるのが嬉しい。

「先生、さよならー!」
「うむ!また明日!」
こんなやり取りが当たり前にできるのが嬉しくて、にこにこしてしまう。
ブンブンと手を振って、教室を出た。
幸せ!
勿論、伊之助に気持ち悪いと言われたけど。



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