#3

5月に入り、お試し期間を経て正式に部活に入った。ダンス部である。※社交の方ではない。
活動内容としては毎月1曲を目処に個人練習、筋トレ、全体合わせを行い大会があれば出場。学園行事では球技大会のハーフタイムや体育祭、文化祭でステージに上がる等マルチに活躍している。他の部活と違い道具を使わないため部費はかからないが、衣装代がそこそこかかるため、練習がない日はバイト三昧の生徒もいる。
顧問はおらず、(一応責任者は体育教師の冨岡)OB、OGで手の空いたものが指導に当たる珍しい部だ。
練習場所は鏡がある場所ならどこでもいい。美術室横のオープンスペース(通称うずスペ)、階段の踊り場、体育館のどこか。今日は雨のため他の部活が広いスペースで筋トレをしており、ダンス部は最寄りの階段の踊り場に散って練習することとなった。


ダンス部は華やかな生徒が多い。パフォーマンスも派手なので、宇髄のお気に入りだ。(なら顧問になってほしいけども!)

「おっお前ら今日は地味にジャージか!」
たまたま通りがかったのか、宇髄が足を止めて声をかけてきた。今日も今日とてパーカーにガム、やりたい放題の見た目だ。

「ん?新入生も入ったのか?よォみょうじ!」
「こ、こんにちは‥?」

仲良しみたいに声をかけられたが、授業以外で話したことはないし、この場にはほかの新入生もいる。なまえは内心首をかしげながら、おずおずと背の高い宇髄を見上げた。

「次はいつだ?球技大会か?」
次とは、ダンス部が練習成果を披露するタイミングだろう。
「はい、サッカーのハーフタイムで踊ります!」
なまえに代わり先輩が答えてくれる。
「そうか!派手にデビューだな!かましてやれ!」
(何を!?)

教師はからからと笑うと、階下を見下ろし「来たな、」と呟いた。
この下の階には職員室がある。会議でもあるのか、角から教師たちが歩いてくるのが見えた。

「んじゃーな、お疲れ!」(バシッ)
「いたっ」
「なまえっ!」

宇髄に勢いよく背中を叩かれた瞬間、よろけたなまえは踊り場を通りかかった生徒の足を踏み(ごめん)、バランスを崩して下り階段の方へ落ちそうになる。同期が名を呼ぶ声が遠くで聞こえる‥

「‥‥っ、悪ぃな」
ところを宇髄に腕を引かれ、後頭部が彼の腹に当たり止まった。近い。けど危なかった‥


胸に手をあて呼吸を整える。ふと、教師たちが階下からぽかんとこちらを見ている事に気づいた。あぁ、煉獄まで。

「階段で遊ぶなァ、危ねぇだろォ」
不死川にバインダーで頭を軽く小突かれる。
先生遊んでないです、被害者です。

教師達は踊り場を通り上の階へあがっていく。煉獄とすれ違う。恥ずかしくて顔も見られない。

「みょうじ、毎日転ぶんじゃない」
「!!」

落ち着いた優しい声に顔を上げると、目を細めた煉獄がこちらを見、ふっ、と口角を上げると去っていった。
「はっずかしいー!!!」←2回目

なまえの顔は真っ赤だろう。何気に毎日転ぶキャラにされていた事が絶望だが、あの顔は反則だ。可愛すぎる。
(でもこの学校に入学して1か月、何故か全部目撃されてるけど転んだのは3回ですからね!いや多いな1ヶ月で3回!)


「何かなまえ‥先生たちに愛されてるね」
羨ましそうに同期が漏らしたのはまた別の話。


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