・しかし結局主導権は(req)2/2


「・・・ねぇ#NAME1#ちゃん」

「なに」

「知ってた?」

「知らない」


天童くんのワイシャツにアイロンを掛けながら、恐らく生産性の無いであろう話を流した。
しかし天童くんはそんなことお構い無いとでも言うかのように、フフンと鼻を鳴らしたのだった。


「俺さ、ずっと#NAME1#ちゃんのこと好きだったんだよネ」

「まったくこの子はどこでそんなホストみたいなセリフを覚えてきたのかしら。やっぱり国分町かしら。」

「ほら、#NAME1#ちゃんってちっさくて可愛いじゃん?それなのにどこかおばさ・・・お母さんっぽいっていうかさ」

「子どもはもう寝なさい。何時だと思ってるの。」


立ち上がり、そのワイシャツをハンガーに掛ける。よし、完璧。
これで明日は問題なくこの子を学校に送り出すことができる。


「ねぇ」

「うおっ!!?」


すると突如、背後から腕を引かれたのだった。
咄嗟のことに足はもつれ、私の身体は重力に従って後方へと倒れたのだった。
程なくして私の背は、私の愛用している大きめの低反発クッションへと埋まったのだった。


「・・・だから、慰めてくれない?」


そして眼前には、天童くんの赤み掛かった目があった。
咄嗟にその顔を押しのけようとするも、両腕は既に天童くんの大きな手によって捉えられてしまったのだった。


「・・・天童くん。どきなさい」

「そんな小動物みたいな顔で凄まれても全然怖くないケド?」

「・・・・・・。」

「#NAME1#ちゃん、好きだよ、」


黙ってその顔を見上げていると、程なくして唇に少し柔らかな感触が当たったのだった。


「アレ?思ったより大人しいね」

「・・・・・・。」

「もっと抵抗してくれてもいいんだよ?」

「・・・天童くん」

「え、もしかして#NAME1#ちゃんも意外とノリノリ?」

「天童くんってば」

「じゃあ遠慮なく「天童覚!!!!」


自分でも予想以上の声量が出た。さすがに驚いたのか、天童くんは一瞬目を見開いたのだった。そしてそれは、すぐにじとりと細められた。


「なに?」


天童くんは、まるで吐き捨てるかのようにそう呟いたのだった。目も完全に据わっている。
相変わらず、その得体の知れない不気味さは健在らしい。いやむしろ、私の記憶の中のそれよりもずっとずっと迫力はある。
きっと私の卒業後も、それは彼によって磨きに磨かれたものなのだろう。
この1年弱、一体どのくらいの人間がその表情に絶望感を与えられてきたのだろうか。
一体どのくらいの人間の心を圧し折ってきたのだろうか。
そしてそれは、果たして何度白鳥沢を勝利へと繋げてきたのだろうか。


「天童くん、3年間、お疲れ様でした!!!!」

「はっ?」

「天童くん、カッコ良かったよ!!!名実共にミラクルボーイだったよ!!!!」


先ほどよりも大きな声で、より明瞭な声で、私は叫んだ。
さすがに天童くんは、今回は本格的にきょとんとした顔をしていたのだった。
私は真っ直ぐとその目を見上げ、一度大きく頷いた。


「・・・なんだよ、それ」


すると天童くんは、そう言って一瞬フッと微笑むと、まるで力の抜けたかのように私の上へと覆い被さってきたのだった。
その赤い髪から、私の愛用のシャンプーの匂いが香ってきたときには私の腕はもう既に解放されていた。


「率直な、感想です」

「・・・別にそれ、こんな状況で言うことじゃないでしょ」

「こんな状況も何も、天童くんにはそんな気なんて一切無かったと思いますけど?」

「・・・・・・。」

「ほらぁー!ほらぁー!」

「ちょっと、うるさい」

「ちょっ、先輩に向かってうるさいって」

「そんなちっさいのに年上面しないでよ」

「年上だもん」

「ってか、なんか一気に眠くなってきた・・・」

「寝なさい寝なさい。子どもはもうとっくに寝る時間です」

「・・・頭撫でてくれたら寝る」

「子どもか」


ため息交じりにそんなことを呟くと、耳元から微かな笑いとハナを啜る音が聞こえてきたのだった。するとどういうわけか鼻の奥がつんと痛くなってしまったものだから、それを誤魔化すかの如くもう一度ため息を吐いて、その子の後頭部に手を添えたのだった。



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「よし、じゃあ今日も頑張れ受験生!」


午前7:30。制服を着込みふわぁと大きな欠伸を発するその子の両肩を叩いた。


「じゃあ、またね」


するとその子は一度ニッと笑って右手でピースを作ると、それだけ言って鼻歌を歌いながら私の部屋を出て行ったのだった。
その笑顔にはどこか不気味さすらあるくらいで昨日の可愛げなんて微塵も無かった。いい意味でも悪い意味でも「天童覚」らしさが戻ったかのようだ。先輩としての安心感と、ほんのちょっとの寂しさを感じながら、私はドアを閉めたのだった。
それにしても天童くんのあの笑顔、何か引っかかる。当時いたずらなんかを企てるときに、よく浮かべていたそれ。
なんだか、嫌な予感がした。


「・・・やられた。」


その予感は、早々に的中してしまったのだった。
ソファの上には、昨夜洗濯し立ての彼のパンツが我が物顔で堂々と鎮座していたのだった。
その後数日間、私が彼のそんな全く同じ手口に引っかかってしまったのは、また別のお話。



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200000Hit御礼企画
テーマ:ゲスくない天童さんが背が低いお相手に可愛くて仕方ないかんじでゲスくないかんじで絡む

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