・明日、部活休ませます(req)


「#NAME2#さんっ!今日一緒に寝ませんか!?」

「えっ」


遠征先のホテルにて。お風呂にも入り終え、ベッドでうとうととしていると物凄い勢いでドアをノックされたのだった。恐る恐るドアを開くと、そこにはナイトキャップを被り、枕を抱えた私たちの学年のエースが立っていたのだった。
いろいろとおかしい。まずそのナイトキャップは、もしかしなくても五色くんが持参してきたものなのだろうか。いや、そんなことどうだっていい。いっそそのキューティクル維持に対しての徹底した姿勢は私だって女として見習うべきところだ。
まず気にすべきは、私の部屋にはベッドが一つしかないということだ。いやむしろそれもどうなのだろうか。そもそも年頃の男女が同じ部屋で一夜を過ごすこと自体、倫理的にどうなのだろう。監督に知られでもしたら果たしてどうなってしまうのだろうか。めちゃくちゃ怒られるか、もしくはお赤飯を炊かれるかのどちらかじゃないだろうか。



「明日も早いですよ!早く寝ましょう!」

「ちょっ、五色くん・・・!?」


そんなこんなで呆気にとられていると、五色くんは何の躊躇も無く私の部屋へと入ってきたのだった。そして枕をベッドの上に放り、早くもベッドインしてしまった。


「#NAME2#さん、ほら!寒いので早く!」

「えっ、えぇ・・・」


なんだかもう、ツッコミどころが満載すぎて頭が痛くなってきた。
五色くん、どうしたんだろう。もしかして監督のスパルタに耐えかねて頭がおかしくなってしまったのだろうか。今日も今日とて、1年生内どころか部内で一番しごかれていたのは他でも無い五色くんだった。そう考えると、不憫さのほうがどうしても先立ってしまう。
五色くんの底抜けに明るいこの姿が、かえって心配だ。


「もしかして、俺の隣りで寝るのイヤですか!?」

「いやそうじゃなくて、なんかさ、いろいろおかしくないかな五色くん・・・」

「え?」

「ほら、一応五色くんは男の子で、私は女の子だし・・・」


なんだか言っておいて物凄く恥ずかしくなってきた。五色くんはあまりにも普通に、ナチュラルにそんな行動をかましてきている。それなのにわざわざそんなことを言うって、なんだか変に意識しているみたいで自分が下品な人みたいじゃないか。
それにそもそも、五色くんの隣りでしっかりと眠ることのできる自信が無い。絶対緊張する。


「ああたしかに!俺も一晩耐えられる自信は無いですね!」

「えっ」

「でも大丈夫ですよ!準備は万端です!」

「何の?」


反射的にそんな質問をしてみると、五色くんは二カッと笑いながら枕をぽんぽんと叩いたのだった。
五色くんの言動の意味はよくと分からないけれども、漠然と嫌な予感に苛まれたのだった。


「大丈夫です、絶対に明日には響きませんよ。鍛えていますので!」

「鍛え・・・?」

「心配には及びません!」

「はぁ、」


相変わらず状況は全く理解できないものの、恐らくこのままだと五色くんは寝てくれない。いくら鍛えているとは言え、寝不足というコンディションで明日の練習試合に臨んでもらうわけにはいかない。なんと言っても五色くんは期待のスーパールーキーだ。
とりあえず、いろいろなことは五色くんが寝てから考えよう。


「し、失礼します・・・」


そしておずおずと、ベッドの中に入ってみた。一応、五色くんには背中を向ける形で。
なんだか変に緊張したし、妙な背徳感にも苛まれた。一体私は何をやっているんだろう。
とりあえず、そんなモヤモヤを誤魔化すようにして目を閉じてみた。


「#NAME2#さん」

「・・・え」


すると突如、被っていたはずの掛布団ががばりという音と共に宙を舞ったのだった。
驚いて目を開くと顔の横に、私のものではない大きな手があった。


「・・・は」


恐る恐る真上を向くと、そこにはニコニコと笑いながら私を見下ろす五色くんの姿があった。
え、何。
状況的には、私は五色くんに馬乗りにされている形になる。いや、全く意味が分からなかった。


「捕まえました」


私は、五色くんに捕まってしまったらしい。なんだろうこれ。もしかしてあれだろうか、プロレスごっことか柔道ごっことか、そういう男子高校生の修学旅行っぽい戯れだろうか。
意外と、というかある意味では予想通り、五色くんにも少年っぽいところがあるらしい。


「五色くん、あのさ、もう私の負けでいいから早く寝よ?」


どう足掻いたところで、私が五色くんにプロレスやら柔道やらで勝てるわけもない。そもそも私相手にそんなことしたところで、睡眠時間が削られるだけで五色くんだってつまらないだろう。
しかして一向に、五色くんはニコニコとしたまま退いてくれる気配は無い。


「負け?まだ何もしていませんよ?」

「いや、あの、だから、ね?」


そしてなんだかどういうわけか、徐々に五色くんの顔が近付いてきている気がする。


「全力で優しくしますから、ね?」

「は」


そして五色くんのそんな言葉が聞こえた直後、私の視界は真っ暗になったのだった。
額に、異様にさらさらとしたものが落ちてきた。そして唇に、なんとも柔らかい感触が触れた。


「!!!??」

「あだっ!!?」


私は勢いよく、腹筋の要領で上体を起こした。額がまともに何かにぶつかり、思わず意識が飛びそうになった。いや、意識なんて飛ばしている場合じゃない。
私、今、五色くんに何をされた?


「・・・・・・!!」

「いった・・・何、するんですか、#NAME2#さん・・!」


五色くんは額を抑えながら涙目で私を睨んでいた。
いや、あの、何するんですかって言われても。えっと、あの、その、


「・・・天童さんっ・・!!」


私は咄嗟に、一人の三年生の名前を呟きつつ部屋から逃げ出した。向かう先はその人のところだ。幸いにして、ホテルに着いてから部屋に入るタイミングが一緒だったから、その人の部屋は把握できていた。
何故ここで真っ先に天童さんの元に向かおうと思ったのかは、自分自身でも分からない。
しかし我に返ったときには、私は泣きながらがむしゃらに天童さんの部屋のドアを叩いていたのだ。


「・・・え、何、どうしたの・・#NAME1#ちゃん・・・」

「五色くんに!乗っかられて!ちゅーされました!!」

「・・・は」


ただ恐らく私は本能的に、この状況をあまり深刻なものにすることなく、且つ確実に解決してくれるのはこの人しかいないと判断したのだろう。その点私の咄嗟の判断力は、なかなか捨てたものじゃないと思う。


「工!ハウス!!」

「は、ハイッ!!」


そしてその後事態はまさかの天童さんによって収束され、私は事なきを得た?のだった。
ちなみに後日確認をしたところ、やはり五色くんは疲労のあまりバグってしまっていたようで、この夜のことは一切記憶に無いらしい。
そんな五色くんを責めるわけにもいかず、しかも結局天童さんからもしばらくニヤニヤされ続けるという、非常に踏んだり蹴ったりな形で騒動は幕を閉じたのだった。


「あ、あの、#NAME2#さん」

「なに」

「なんだか最近、俺に冷たくないですか・・・?」

「別に」

「あ、あの、俺!#NAME2#さんのことが大好きなので!あんまり冷たくしないでもらえると、嬉しいです!」

「・・・えっ」


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200000Hit御礼企画
テーマ:肉食系五色くんと草食系同級生ヒロイン

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