・言ってもやっぱり次期エース(req)
「そう言えば#NAME2#」
「ん?」
「お前これ放課後机の上に置きっぱなしだったぞ。宿題このテキストから出てただろ」
「うわ、ありがとう白布くん。助かる」
「礼は期待してるから。分かってるよな」
「うん。でもしらす単体ってどうやって奢ればいいの?」
練習終了後。クラスも同じ白布くんと何の気なしにそんな会話を繰り広げていると、背後から刺されるような視線を感じた。
「・・・・・・。」
「?」
振り返ると、両の頬を膨らましながらじとりと私を睨んでいる五色くんとまともに目が合ったのだった。
え、なにこれ。ちょっと可愛すぎないだろうか。
「ごーしきくーん!フグごっこ?」
「!?」
両手の人差し指をその子の頬に突き立てると、その子の口から勢いよく空気が漏れたのだった。少年の頬って、皮下脂肪が薄いせいかなんだか焼き鳥の鶏皮のようなもにゅもにゅとした感触をしている。たまらない。
「・・・やめて下さい」
五色くんは私に頬をつんつんとつつかれながら、睨みあげてきたのだった。
なんて可愛らしいのでしょう。
「何拗ねてんだ、お前」
すると背後から、今度は白布くんの吐き捨てるような声が聞こえてえきたのだった。
それを受けた五色くんは、一瞬でぼんっと顔を真っ赤にしたのだった。
「別に俺は拗ねてなんていませんよ!!何言ってるんですか白布さん!!!」
「ふーん」
「ふーんじゃないです!!」
また白布くんが、五色くんをイジメている。いや、これはイジメなんだろうか。
白布くんは普段、冷血人間を疑うレベルで冷静なのに、どういうわけか五色くんが絡んだときだけ少し大人気無くなるような気がする。
セッターとして、それだけ次期エースである五色くんを気に掛けているということなのだろうか。なんだか物凄くほっこりしてしまった。
「#NAME2#」
「なに?」
「髪にほこり付いてる」
「え、嘘」
振り返ると、いつの間にやら私のすぐ後ろに立っていた白布くんが私の髪を一筋すくっていたのだった。
「とれた」
「ありがとう白布くん」
そんな他愛の無いやりとりを繰り広げていると、また鋭い視線を感じたのだった。
「絶対嘘です!!」
「な、何が?」
「#NAME1#さんの髪にほこりなんて、ついてなかったです!!」
五色くんは物凄い剣幕をしながら、白布くんに向かってそんな謎の主張を始めたのだった。白布くんはそれを受けて鼻で笑ったのだった。
「へぇ。で、それがどうした?」
白布くんは目のあたりに影をつくり、薄ら笑いを浮かべたのだった。なんだか天童さんみたいな、あるいはそれ以上の迫力がある。
誰が見てもまごうことなき美少年である白布くんの、ゲス顔。はんぱない。
「女性の髪に理由も無く触れるなんて、駄目だと思います!」
「なんで?」
「なんで、って・・・!」
なんというか、白布くんが物凄く活き活きとして見えた。
元来、彼はどちらかと言えばそっち方向の人間だったのだろう。牛島さんへの従順さとか、彼の上を行く天童さんのキャラなんかに隠されていただけで。
「俺は、変な目で見る奴のほうが大概だと思うけど」
「なっ・・・!!」
それにしても、相手がよりによって五色くんであることはさすがに頂けない。
こんな純朴な子に対して、些か大人気ないにも程がある、という奴じゃないだろうか。
なんだか前髪ぱっつん同士、兄弟喧嘩を見ているようで微笑ましくもあるのだけれども。
「#NAME2#」
「なに」
「お前俺に髪触られて嫌だったか?」
「?別に」
「ほらな」
白布くんが口角を上げながら、なんとも性格の悪そうな表情をつくっていた。五色くんはわなわなと震えていた。
なんだかいい加減、五色くんが不憫になってきたのだった。
「いや、あのね、もちろん私五色くんに触られたって嫌じゃないからね!?」
フォローになっているのかいないのかは分からない。
でもとりあえず、今私がこの場で言えることなんてこのくらいなんじゃないかと思ったのだ。
すると五色くんは、一瞬きょとんとした後にまた一層顔を赤くしたのだった。
「で、ででできませんよそんなこと!!」
五色くんは半ば叫ぶようにそんなことをアピールしてきたのだった。
顔は信じられないくらいに赤い。
どうしよう。あまりにも可愛すぎないかこの子。果たして今のこの子にノックアウトされない年上女性なんて、この地球上に存在しているのだろうか。
「・・・五色。それ、ちょっと#NAME2#に失礼じゃない?」
「なっ・・・!!」
そして我が学年のドS王子は、間髪入れずに追い打ちをかけるのだ。
本当に信じられないくらいに活き活きしてるなぁ白布くん。牛島さんにセットアップしてるシーンですら、ここまで楽しそうな表情は見たことが無かったように思う。
「そりゃ、お前のキューティクルに比べれば#NAME2#の髪は傷んでるかもしれないけど、」
あれ、なんかさりげなくディスられた気がする。
でもさすがに比較対象が比較対象だ。五色くんのキューティクルに勝つことのできるそれを持った人間なんて、例え女子でもそうそういないだろう。
「そういうつもりで言ったんじゃ、ありません・・・!!」
五色くんはもはや涙目だ。いい加減かわいそうすぎる。
しかしあの白布くんが至極楽しそうなのだ。
白布くんは恐らく、普段人一倍のストレスを感じているのだろう。そんな彼が楽しんでいるとなると、私もこの部のマネージャーとしてうかうか邪魔することなんてできない。
どうしたものか。
「じゃあどういうつもりで言ったんだよ」
そして白布くんはとことん容赦無い。この子、絶対敵に回しちゃいけないタイプだ。
敵に回したとして勝つことのできるのは、せいぜい牛島さんと天童さんくらいだろう。
めちゃくちゃ頭も良いし。
「それは、」
「それは?」
「・・・すみません。#NAME2#さんと仲がいい白布さんに、やきもちやきました・・・」
・・・は
「・・・え、あ。おう」
白布くんはついに黙ったのだった。五色くんの素直さが、白布くんのサディズムを蹴散らした瞬間だった。
いや、それにしても五色くんは今、とんでもない爆弾発言をかましてきたような気がする。依然顔を真っ赤にしながら俯く五色くんの姿に、なんだか心臓をがっしりと掴まれたような感覚に陥った。
え、なにこれ。
「あ、あの、#NAME2#さん!!」
「ハイッ!!?」
そしてまじまじとその姿を眺めていると、五色くんはいきなり顔を上げて私の名前を叫んだのだった。
心臓が大きく跳ねた。
「#NAME2#さんの髪、触ってもいいですか・・・!?」
そして五色くんときたら、至極真剣な顔でそんなことを言ってきたのだった。
え、私の髪?なんで?五色くん触りたいの?え、なんで?
「ごめん無理!!絶対ダメ!!」
「えっ!!??」
そして混乱する中で私が返した言葉は、全く意図せずそんなものだった。
先ほど「嫌じゃない」とか言っておきながら、我ながら理不尽な話だと思う。
それでもどういうわけか、今たとえ髪であっても五色くんに触れられてしまったら、私はとんでもない方向に走ってしまいそうな気がするのだ。
そして五色くんはその後、床にへなへなと崩れ落ちたのだった。あたふたとしつつ白布くんのほうを見ると、白布くんは呆れたような顔で私を見ていた。
「#NAME2#、それはさすがにひどいと思う」
「違う!違うんだよ五色くん!!なんかね、めっちゃ恥ずかしかったんだよ!!ごめんそんなつもりじゃなかったの!聞いてる五色くん!?ねぇ、ねぇってば!!」
ひたすら五色くんに向かって叫ぶも、五色くんに私の言葉は一切届いていないようだった。
その後とりあえずその腕を掴み、無理矢理一緒に帰った。
あからさまに落ち込みながらも終始徹底して車道側を歩いてくれた五色くんの姿に、いつもと違う方向に少なからずときめいたのは、また別のお話。
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テーマ:嫉妬する五色くん