・+50cm(白鳥沢オールキャラ)
※白鳥沢生もれなくキャラ大崩壊注意
自分の持っていない物を持っているひとには憧れて然るべき。
しかしそれが努力で手に入るものでは無かった場合。持たざる者はただただ指をくわえて“持つ者”を嫉妬することしかできない。
思春期真っ盛りの中学生くらいのときは、私はその憧れと嫉妬の塊になっていた。それはもう、耐えきれない程の。
だからいっそ、私以外の全員が全員私の欲しいものを持っているであろう環境に飛び込んでしまえと思った。そんな環境に慣れることができれば、私は生涯のコンプレックスを乗り越えることができると思ったのだ。
案の定、慣れるに従ってそんなコンプレックスは消えていった。しかし
「#NAME1#はどこだ」
我らが主将は、私の目の前で私を探してキョロキョロしていた。素らしい。
私は丁度目の前よりも少し上の位置にあるその人の心臓目掛けて鉄拳を放った。
「いたのか」
牛島は大層驚いたような顔をしていた。もちろん私の鉄拳によるダメージなんて一切受けていないらしい。むしろ私の指の付け根が嫌な音を立てたくらいだ。どんな胸筋装備してるんだよ。
それにしても私を発見した牛島は珍しく驚きを顔に露骨に表していた。普段無表情なだけあって、嫌みや皮肉なんかじゃなくて本気で驚いていることが見て取れた。だからこそいらっとした。
「何か、用?」
自分の遥か上にある牛島の目を睨み上げながら、極限まで不機嫌さを表現した声で尋ねた。
すると牛島はきょとんとした顔をしてみせた後、その無駄に大きな手をぽすりと私の頭の上に乗せてきた。
「お前、今日は輪をかけて小さいな」
「なんだと!」
そしてそんな至極失礼なことを呟きながらそのまま私の髪をわしゃわしゃと力任せに撫で始めたのだ。いたい、首がもげる。一体私が何をしたと言うのだろうか。
しかし今日は大会。体育館内には一般人よりも高い身長を持つ人々がわんさかとひしめいている。たしかにそんな人たちと比べてしまえば喩え平均的な身長を持つ女の子でも小さく見えてしまうことだろう。
だからこれは私にとっては環境的な不可抗力だ。そうだ。仕方ない。
「いいか。他校の奴に話し掛けられても無視だぞ。知らない大人にはついて行くなよ」
「ついて行かないし、私も高3だからね。大人て」
牛島を見上げながらそういうと、牛島の眉間にクッと皺が寄った。
この角度でのその顔は恐怖以外の何者でもない。今更牛島を怖いとは思わないけれど、反射的にびくりと身体が跳ねた。
「いや、相手はお前を小学生だと思って菓子を持ちながら近付いてくる。そして家につれて帰ろうとしてくる」
「なんで断定型なの?」
「俺にはそんな奴らの気持ちが痛いほど分かるからな」
「牛島ちょっと黙ろうか」
「ということで菓子やるから今日うちにこないか」
「なんで」
「部屋に飾る」
「何を!?」
そんなやり取りをしているうちに、牛島はコーチに呼ばれて簡単な打ち合わせを始めたのだった。
試合開始まであと20分程度。牛島はあんなかんじだったけれど、他のレギュラー勢は各々まるで精神統一をしているかのように静かだった。この緊張感、嫌いじゃない。なんだかチートな選手が多い白鳥沢でも、この瞬間だけはやっぱりなんだかんだ人間の集まりなんだということを実感できる。
「あ、合法ロリ…じゃなくて#NAME1#さん」
「白布くん今さりげなく私に爆弾ぶつけてきたね」
そんな中で一際落ち着いた表情をしていた白布くんが、私と目が合うなりベンチから立ち上がってそんな失礼なスタンスで私に話し掛けてきた。
「たしかに合法ロリ先輩がここで迷子になったら取り返しがつきませんよね。牛島さんの気持ちは分かります」
「なんでさっき誤魔化したのにわざわざ言い直したの」
白布くんの視線につられて辺りを見回すと、絶対王者に対しての好奇と畏怖の表情を浮かべる他校生がずらりと立っていた。
うん、みんな、やっぱりでかい。
「ということでおんぶさせて下さい」
「どういうことで!?」
「あ、落下を防ぐために俺の背中にできる限り身体を密着させるかんじでお願いします」
「いやだけど!?」
「えっ…でも落ちると痛いですよ…?」
「なんで顔がマジなの!?」
白布くんもまた珍しく、露骨に焦ったような表情を浮かべていた。本当になんなのこの人たち。
「じゃあ手を繋ぎましょうか。それで少なくとも迷子は回避できます」
「言っておくけど私キミより年上だからね」
「140cm弱の年上がいてたまりますか」
「今キミの目の前にいるよ!悪かったな!」
それにしても白布くんには緊張という概念が無いのだろうか。試合直前にしてこのテンション。頼もしい限りだけれども、なんだろう。手放しで喜べない。
「#NAME1#ちゃん、何怖い顔してるの?そんな顔してたら大きいお友達に“萌えー”って言われちゃうよ?」
「大きいお友達って誰!?」
天童はいつものようにニヤニヤしながらそんなことを言って私の頭を軽く叩いた。
「#NAME2#。気を付けろよ。男は基本的には全員ロリコンだ。」
「そんなことないよ!?」
大平はいつものような菩薩顔で私の両肩に手を置いた。
「#NAME1#さん!ここは危険です…一刻も早く俺と手を繋ぎましょう!」
「被ってる。五色くん白布くんと被ってる」
「絶対にはぐれないように恋人繋ぎでいきましょう!」
「いきません」
この人たちがその身長でどんな世界を見ているのか、知りたかった。
だって牛島なんかで言えば私よりも50cmも身長が高いし、きっと私には見えない世界が見えているものだと思っていた。
私には到底見えない世界。
でも、
ごめんなさい。やっぱり知らなくていいです。
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