・+50cm/+36cmの白布くん
※白布くんキャラ大崩壊注意
「合法ロリ先輩」
時刻は20:00。週末の遠征合宿も無事終わり、軽いミーティングの後で解散。そして休む間も無く明日からは普通に学校。こんな生活も3年目になるとすっかり慣れてくるから不思議だ。しかし2日間昼夜問わずいじられっぱなしだった私は、結局のところ心身共に疲労困憊だった。
だから未だ熱っぽく打ち合わせを続けていた大平や瀬見を尻目に、早々に帰宅することを決めたのだ。
そんなかんじで夜間の校舎内を歩いていると、背後から聞き慣れた声が聞こえた気がした。しかしきっと気のせいだろう。だから私はシカトを決め込むことにした。今はとにかく一人になりたい。
…シカトも何も、別に私は私の固有名詞を呼ばれたわけでもなんでもないし。むしろそんな呼び掛けに反応してしまうとか、自分自身をそう認めてしまうのと同じことだろう。そしてその点については、今そんな言葉を発している私の後輩は容赦なくツッコんでくるだろう。なんてったってこの子は生意気な程に賢いのだ。
「…合法ロリ先輩?」
背後の声が少し近付いた。なんなのもう。しかして私は返事をする気は毛頭無い。
そのままスタスタと歩いていると、ついにその子は私を追い越して私の目の前に立っていた。
「…………。」
じとりと睨みあげると、その子は目を細めながらふう、と一つ溜め息を吐いた。
「…138.7cm先輩」
「138.8cmだけど!!?」
思わずムキになって返事をしてしまった。その子はそんな私を見て、どういうわけか幼稚園児の妹を見るお兄さんのような表情をしていた。先輩に対してそんな表情をする後輩って何。
「朝晩の誤差の範囲内ですね」
この2日間、この子も私を(主に身長のことで)散々いじってくれた。ド真面目な顔でお風呂に一緒に入ることを提案されたときは目眩がした。なんだなんだ。まだ足りないと言うのだろうか。
「ちょっと黙ろうか白布くん。そして何か用?」
「なんか機嫌悪いですね#NAME1#さん。今日反抗期ですか?」
「1日限りの反抗期って何!?」
まともに顔も合わせずそのまま歩を進めると、その子は平然と隣りを歩き始めたのだった。
「そんな#NAME1#さんに提案です」
「どんな#NAME1#さんですか」
「俺と一緒に帰りましょう」
「今私とにかく一人になりたいんだけど」
「こんな夜道をそんなナリで一人で歩く気ですか?」
「そんなナリ、って」
「#NAME1#さんはもっと自分の文字通り犯罪的な可愛らしさに責任を持つべきです」
「私の何が犯罪的なの!?」
「はぁ…察して下さい」
「なにその溜め息!?」
普通に女性の夜道一人歩きは危険です、とでも言ってくれれば感動の一つでもするだろうに。この子はいつも一言多いし表現に棘がある。
今更イライラなんてしないけれども、先輩に対してその態度はどうなのよと小一時間問い詰めたい。意味は無いだろうけれども。
「!?」
「どうしたんですか?」
そしてさも当然のように白布くんは私と手を繋いできた。物申したいのはやまやまだったけれども、きっとまたからかわれて終わるだけだからわざわざ言わない。
そのまま私は半ば諦めるような形で家へと歩を進めたのだった。幸いなことに、私の家は近い。
********
「…#NAME1#さん」
「な、なに」
10分程終始無言で歩き、家の前に着いた。
すると白布くんはおもむろに私の両肩に手を置き、至極真面目な顔をつくってみせたのだった。
街頭に照らされたその顔は相変わらず物凄く整っている。性格や発言がどうであれ、こんな美少年にこんな近距離で見つめられてうろたえない女子なんているのだろうか。
「俺と家族になりましょう」
「は」
そしてその口から飛び出したのは、思わず耳を疑ってしまうような発言だった。一瞬思考が停止した後、一気に顔に熱が集まった。
これは所謂告白…どころかプロポーズという奴なのだろうか。そう気付いたときには既にもう心臓がばくばくと音を立てていた。
後輩相手に情けない、なんて思いつつも動揺せざるを得なかった。だってあまりにも唐突だ。一方の白布くんは一向に表情を変える気配がない。それどころかむしろ目なんて据わっているくらいだ。
告白とかってもっとこう、なんか、甘酸っぱい雰囲気が漂うものじゃないの?そんなことを思いつつ、なんだかイヤな予感がした。
「…嫁じゃなくてもいいです。俺の妹か、最悪娘になりましょう。」
へっ?
「妹とか娘になるほうが難易度高くない!?」
…法律的に。
いやいやそんなことよりも。やっぱり予想通りなんだか様子がおかしい。相変わらず表情を変えない白布くんにはもはや恐怖すら覚える始末だ。
「このままお別れなんて嫌です。一昨日からずっと一緒にいたのに、今更#NAME1#さんのいない家に帰るのなんて過酷です。」
「過酷!?」
あくまで淡々と、いつものようなローテンションで白布くんはそんなことを呟くのだ。
いよいよ恐怖しか湧き上がってこない。私は情けなくも金魚のように口をぱくぱくと開閉することしかできなかった。
「それが無理なら、一つだけお願いを聞いて下さい」
「な、なに」
白布くんの私の両肩を掴む力が強まった。街灯に照らされた色素の薄めな白布くんの目は、なんというか更に真剣だった。女の子みたいに可愛らしく綺麗な顔をした白布くんのそんな表情。それが至極近距離にある今、どういうわけか改めて心臓が誤作動を起こし始めた。なんて単純なんだ、私は。
だから思わず目を逸らすと、白布くんがすうっと息を吸い込む音が聞こえた。え、なに。どうしたの白布くん。今度は何を言われるの私。なんだか妙に緊張してしまった。
「俺のこと、1回でいいので“お兄ちゃん☆”って呼んでもらえないですか」
間
「あ、お疲れ白布くん。明日もまたよろしくね」
「#NAME1#さん!?」
「さようなら。いい夢を」
私は白布くんを尻目に門扉の鍵を閉めた。
なんだか白布くんが地面にへたり込んで私の名前を繰り返し呼んでいたような気がしたけれど、もうどうでもいい。
とにかく私は疲れた。早くお風呂に入って牛乳飲んで寝たい。
少しでも身長が伸びれば、この謎のストレスも減ってくれるのだろうか。
そんなことを思いながら、私は後ろ手に玄関のドアの鍵を閉めたのだった。
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