・+50cm/+休み時間(req)
※白鳥沢生、瀬見くん以外もれなくキャラ崩壊注意
「そろそろ、来年のマネージャー探さないとまずい気がする」
休み時間中。隣の席でバレー雑誌を読み耽る牛島の姿を見ながらふと呟いた。すると、それに気づいたらしい牛島がきょとんとした顔で私を見てきたのだった。
「#NAME1#」
「なに」
「お前、本当に高校3年生だったのか」
「うん。なんかいろいろとおかしくないかな」
少なくとも、同じクラスの人間が言う言葉では無いだろう。
「たしかにそうだよな…去年も今年も、監督と若利のせいでビビッて誰も入らなかったしな…」
すると、そんな私たちのやり取りに気付いたらしい山形が、苦笑いを浮かべながら我々の席に寄ってきたのだった。牛島は山形の言っている意味が分からないらしく、やっぱり首を傾げていた。
監督はともかく、たしかにこんなバレー以外ではいろいろと抜けているような人間でも、いざ対峙すれば怖いだろう。妙なオーラや迫力があるし、何よりもでかい。
私も約2年前の入部当初には心の底からビビったものだ。牛島には、初対面で挨拶した直後に何故か高い高いされたし。あのときはマジ泣きした。私も若かった。
「早めになんとかしないとまずいよね。監督、多分マネージャーのことまでは考えてないだろうし」
「…嫌味でもなんでもねぇけど、多分監督もお前が3年生だって事実、忘れてると思う」
「それは私も薄々感じてる」
山形くんの発言を受け、監督からかけられる言葉を思い出してみた。
そう言えばつい最近、「お前、高等部に進むんだよな?」という言葉を掛けられたりもした。そのときは監督でも冗談を言ったりするんだなぁなんて苦笑いで流したけれども、今思えばやっぱりあの監督が部活中に意味も無くそんな冗談をかましてくるはずも無い。だからガチで中学生だと思われている可能性だって十二分にある。監督はしばしば中等部の練習にも顔を出しているわけだから、混乱するのも分からなくはない。
まぁそれは置いておいて、とにかく人員を探さなければ。しかもゆっくりもしていられない。まだ見ぬ後輩のためにも、一つでも多くの試合や遠征なんかを経験させてあげなければと感じるからだ。そうとなったら、善は急げだ。
「…山形。今日私、休み時間中に1年生と…あと一応2年生の教室も回ろうと思うんだけど、一緒にきてくれないかな」
別に私一人でもいいのだけれども、ここまで来ると別に女子にこだわらなくてもいいかななんて思ったのだ。なんとなく、バレー部の試合に応援に来てくれる子も、男の子のほうが多いような気がしたし。そうなったときに、やっぱり私一人で頼みに行くよりかは、男の先輩も隣にいたほうが良いだろう。
「悪い。俺今日、日直」
「あ、ゴメン。そうだった」
山形が適任だと思ったんだけどなぁ。でも日直だったら仕方ない。
「#NAME1#、それなら俺が行く」
「牛島。さっきの山形の言葉、聞いてた?」
「?だから日直なんだろう?」
とりあえず牛島は論外だけれども、言ってしまえばこの子とあのモンスター以外だったら誰でも大丈夫だろう。さすが白鳥沢。そこは純粋なスポーツマンの層だって厚い。
とりあえず、一番優しそうな大平にでも声を掛けてみるか、なんて思いながらふと廊下のほうを見ると、そこに丁度、ある人物が通ったのだった。
「!!ちょっとそこのイケメンセッター!!顔貸して!!!」
これは、心強い味方をゲットしたかもしれない。
_
「そうか、もうそんな時期なんだなァ…」
次の時間の休み時間。うちの部の誇る正統派イケメンは2年棟の廊下を歩きながらしみじみとそんなことを呟いたのだった。
「瀬見、ちょっと帰宅部っぽい子には意識的に笑顔を向けてみて」
「?お、おう」
私は、瀬見という人間が好きだ。もちろん恋愛感情云々では無いけれども。
とりあえずこの子は、私に対して理不尽な身長弄りをしてくることは滅多に無い。あの大平や山形ですらも無意識でそんなことをしてくる中、それだけでこの子は常識人に見えてしまうのだ。しかも普段そのイケメンぶりを完全に無駄遣いしている点も、物凄く好感が持てるじゃないか。この子には幸せになって欲しい。そう心から思えるくらいには、私はこの子のキャラクターが好きだった。
「男子バレー部、マネージャー募集中です!興味のある人は私3年マネージャー、#NAME2#まで連絡下さい!」
そしてまずは2年1組の教室にて、そんなことを叫んびながら連絡先付きのビラを配ったのだった。瀬見には隣で爽やかスマイルを浮かべてもらった。
「え、なにあの人…超イケメン…」
「な、あの人3年生…!?え、ちっさ…えっ…」
「男子バレー部、あんなカッコいい人いたの!?完全に牛島さんしか見てなかった…!!」
「初めて生で見た、合法ロリ…」
するとざわつく教室内からは、およそ予想通りの呟きがあちらこちらから聞こえてきたのだった。何故かちょっと目頭が熱くなったけれども、相方のほうはなかなかいい働きをしてくれている。もしかしたら即日で希望者が殺到するかもしれない。
そんなことを思いながら、次の教室に向かったのだった。
「なっ…!!?」
そんなことを繰り返しながら、次に向かった先は2年4組だった。教室に入るや否や、血相を変えた白布くんが駆け寄ってきたのだった。そうだ、白布くん、このクラスだった。
「なんで瀬見さんと#NAME2#さんが、一緒に休み時間を過ごしているんですか…!!」
「え」
すると白布くんは、物凄い剣幕でそんなことを言ってきたのだった。
うん。そりゃ同じ学年なんだから一緒に休み時間を過ごすことだってあるだろう。私はきょとんとしながら瀬見と顔を見合わせたのだった。
休み時間のためざわついていた教室内は、いつしかしんと静まり返っていた。
「もしかしてアレですか…!?実は昼休みも俺に黙って一緒に#NAME2#さんのお手製弁当食べたりとか、してたりするんですか…!!?」
「い、いや私学食派だけど」
そして仮にお弁当を持ってきていたとしたら、私は白布くんに一言義理を通さなければならないのだろうか。うん、どういうことだろう。
「クラスが同じな牛島さんや山形さんならまだ分かりますけど、何故瀬見さんが…!!」
白布くんはギリィっと唇を噛んだのだった。一体白布くんに、何が起こったのだろう。そんな私の狼狽えを代弁してくれるかのように、教室内の至るところから「あの大人しい白布がマジギレ…!?」だの、「え、どうしちゃったの白布くん…!?」だの、戸惑いの声が聞こえてきたのだった。本当にどうしちゃったの白布くん。
「…#NAME2#。」
「な、なに?」
「このクラス、後回しにしようぜ」
「うん。分かった…」
瀬見は苦笑いを浮かべながら、そんなことを言ってきたのだった。私は全面的に同意だった。
「ちょっ、#NAME2#さん!?まだ話が途中ですよ!!?#NAME2#さん!!!」
「し、白布…次移動だから…」
「…瀬見さん…この、ムッツリロリコン野郎がぁああああ!!!!」
なんだか背後から、およそ白布くんのものとは思えない悲痛な叫びと、そんな彼を諫める2年4組の生徒の声が聞こえてきたのだった。
私と瀬見は、それを聞かなかったことにしつつ次のクラスへと入ったのだった。
「…なんか今、白布の声が聞こえた気がしたんですけど」
「ああ。気のせいだ太一」
そこには川西くんがいたのだった。欠伸混じりで、前髪が少し跳ねている。きっと前の時間も机に突っ伏してゆっくりと寝ていたのだろう。先輩としてそこはいかがなものかとも思うけれども、まぁ寝る子は育つとも言う。川西くんの場合、そこに説得力がありすぎるから私は何も言えない。言ったところで「#NAME2#さんは慢性的な寝不足なんですか?」なんて返されかねない。
そうこう考えている間に、瀬見が川西くんに一通り説明をしてくれたのだった。
「あー…。そういうことなら俺に任せて下さい」
するとどういうわけか、川西くんはらしくもなくそんなことを言ってくれたのだった。
あの、基本的に面倒事を嫌う川西くんが。さすが来年から、白鳥沢の柱を担う人間なだけある。
そんなかんじで素直に感動した一方で、なんだか嫌な予感もしないわけではなかった。杞憂に終わってくれることを願う。
「男子バレー部、マネージャー募集中―。性別問わずー。ちなみに今入部するとこんなイケメン先輩とこの奇跡の合法ロリ先輩とチームメイトになれるよー。」
川西くんが、あまり覇気の無い声で、どこか気だるげに発したのはそんな誘い文句だった。
それを受けた教室内は、一呼吸置いた後に黄色い歓声と野太い叫びに包まれるような、カオスな空間と化したのだった。
「…瀬見。」
「…なんだ、#NAME2#」
「このクラス、こわい」
「ああ、そうだな」
私は瀬見とともに、静かに2年5組の教室を後にしたのだった。
そして一旦教室に戻り、次の授業を受けた後に1年棟へと向かった。あんな恐怖体験をした後に、貴重な休み時間に笑顔を浮かべながら教室前で待っていてくれた瀬見。私は何故この子のファンクラブがこの学校には無いのかと、切実な疑問を抱いたのだった。
「新しいマネージャーですか!!?なんでですか!!?」
「いやなんでって、私今年卒業だし」
「………!!!#NAME2#さん、そんなに小さいのに、本当に3年生だったんですかっ…!!?」
「………。」
…牛島か。
なんだろう。やっぱり同じチームで同じ立場を担おうとなると、性格や思考まで似てきてしまうのだろうか。そしてさりげなくディスられたわけだけれども、どういうわけかその大きな目に涙を溜め始めた五色くんに対して、苦言をぶつけることなんてできなかった。
「瀬見さんも、やっぱり卒業してしまうんですか…!!?」
いや、そりゃするでしょう。反射的にそんなツッコミを入れたくもなったけれども、どういうわけかそれを受けた瀬見も目に涙を浮かべていた。
「五色!!俺ら、できる限り長くいれるように頑張るからな!!」
「は…ハイッ!!!俺も、瀬見さんたちに一日でも長くいてもらえるように頑張りますっ!!!」
「………。」
あ、これ、絶対ツッコんじゃいけない奴だ。
その後瀬見と五色くんが二人して抱き合いながら男泣きを始めたことで、1年棟については今回3組で頓挫してしまったのだった。
_
「お疲れさまー。……え?」
そして放課後、体育館へと向かった。ともすれば早速入部希望の子たちが来ているかもしれないからと、いつもよりも急いで来た。
するとそこにはどういうわけか、物凄い剣幕をした牛島と白布くんが腕を組んで立っていたのだった。
「どしたの…?」
なんだか、物凄く嫌な予感がした。
「…明らかに#NAME2#さんに手を出しそうな輩が先ほど一気に押し寄せたので、牛島さんと一緒に一蹴しました。」
「え」
「そんな奴は、うちの部には必要無い」
「あ、そう…」
まぁ、たしかにそんな子が後輩になったところで私だって困るからそれはそれでいいのだけれども、なんだかこの二人の場合、もっとこの部にとって致命的なことをやらかしたような気がしてならないのだ。
「でも、勿体ないよね〜」
「あ、天童」
「さっきね、女の子もいっぱい来てたんだけど、若利くんと賢二郎の勢いにビビったのか全員逃げてっちゃったよん」
「………。」
私は、膝から床に崩れ落ちたのだった。
.
_
200000Hit御礼企画
テーマ:+50cm 白鳥沢生の学園生活