翻弄されるトド松
「トド松にいさんって、ドライモンスターなの?」
邪な気持ちを一切含んでいない声でそう問うた少女#name#は、なにもトド松の妹ではない。わりかし近間に住んでいる親戚の子で、六つ子の事をにいさんにいさんと慕ってはたまに遊びに来ている。中でもトド松は六つ子間で唯一兄さんと呼ばれる事がないため#name#を滅法可愛がっていた。そんな#name#から極力聞きたくない単語が出てくるとなると、顔が引きつってしまうのも無理はない。
「えーっと、答える前に僕からも質問。誰から聞いたのかな?」
「チョロ松にいさん!」
「(チェリー松テメエエエ)」
元気よく答えた#name#は憎めないほど可愛いのだが、その幼気な唇から出てきた名が悪かった。持っていたペットボトルがみしみしと音を立てる。ドライモンスター、もといトド松は#name#に負けないほど無邪気な瞳を向け、どうにかその単語から興味を逸らす方法はないものかと模索していた。中々に上手い対策が見つからずへどもどしていると、その内にも#name#は口を開く。
「ドライモンスターってかっこいいよねえ」
「え?か、かっこいい?」
「うん。悪のオヤダマみたい」
まさか嬉々として悪の親玉呼ばわりされるとは思ってもみなかったトド松は呆気に取られた。#name#が女の子ながらに特撮モノを好むのを知っていただけあって、どこで覚えてきたのかは大方検討がつくのだが、何分褒められているのか悪口として言われているのか分からず、ただ#name#のふわふわした頬を見て意識をどこかに飛ばしていた。
「(でもかっこいいって言われたしな・・・)」
「トド松にいさん?」
「・・・#name#ちゃんは、正義の味方側じゃないの?」
不意に出た質問だった。そこまで深刻なものではない、でも肯定されたらちょっと悲しい質問。セーギの味方、と反復した#name#は小さな手をきゅっと握り込む。
「私はトド松にいさんの味方だよ!いっしょに悪をきわめるの!」
そう言われて、ただでさえ可愛い#name#が今や天使にすら見えていた事だろう。悪を極める天使とはこれ如何に。しかしそんな事は全く意に介さず#name#にめろめろなトド松は、その時初めて「ドライモンスターって呼んでくれてありがとう・・・!」と兄弟達に感謝するのだった。
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