においを探求する十四松


「十四松って生活臭しなさそう」
「えー!」

突拍子のない言動で周囲を驚かせる十四松と付き合う#name#も突拍子のない言動が多かった。そう思っているのは周囲の人間だけで、何らかのプロセスを経てその言動に至っているのかもしれないが、それを晒さない以上はやはり「突拍子のない」と一括りにされてしまうのだ。一方、生活臭がしなささそうと銘打たれた十四松は野球盤をいじるのをやめ、ただでさえ伸びているパーカーの袖を引っ張って鼻をひくひくとさせていた。誰に限った事ではないが、自らのにおいはそのほとんどが気付きにくく、十四松も例外ではなかったようで、生活臭を嗅ぎ当てるのを断念した。

「あと無味無臭って感じがする」
「俺だってにおいあるよー!味はちょっと分かんないけど!」

においについて一応反論してみるものの、これまた突然提唱された無味説に対してはなんとも言えないようだった。当然といえば当然である。自らの味などにおいより分かりにくいだろう。今度は袖から手を出してくんくんと嗅いでみるも、結果は同じだったようだ。じっと手を見つめた後、十四松はそれを#name#の前に差し出す。

「・・・食べる?」
「いや、いいかな」
「無味無臭か分かんないね」

判断を託してみるも即断られ、十四松は行き場のなくなった手をぐーぱーする。規則正しい動きをしばらく眺めていた#name#は、開かれるタイミングを見計らって手を掴み、十四松を自分の方へ引き寄せる。突然の事であったし、なにより抵抗する理由もなかったので大人しく引っ張られては大人しく#name#の腕の中へダイブした。首元へ顔を近付けられるとさすがに「くすぐったいよ」と身じろぎしてみせる。

「あるね、におい」
「まじで!?やったー!どんな感じ?」
「これぞ十四松って感じ」
「じゃあ俺のにおいだね」

えへへとはにかむ十四松は、そのまま#name#に頭を押し付けてぐりぐりする。幼い子供がかゆいのをむずがっているようにも見えるし、動物がマーキングをしているようにも見える。されるがままの#name#は一応「どうしたの」と聞いてみる。止めようとする気配はもちろんない。

「俺のにおいを#name#ちゃんに移してた!」
「そう」
「これで#name#ちゃんは俺と仲良しだってみんなにも分かるでしょ?」

"みんな"とは恐らく兄弟達の事であり、その"みんな"はずば抜けて鼻が利くわけではないと十四松は失念して──いや、そもそも分かっていないのかもしれない。とにかくあっけらかんに言いのけた十四松に対して#name#は静かに「仲良し」と呟いて、それとは裏腹に少しだけ大げさな振りで頭を押し付けてぐりぐりし始めた。突拍子のない言動には言葉にしないだけで、やはり理由は存在するのだ。・・・それにしても、2人の仲良し加減の示し方はなんて野性的で、なんて分かりやすいのだろう。

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