【 専門学校一年生 秋 】

 研磨が一人暮らしをすることになり、わたしもそこへ転がり込むことになった。
 朝と夜のわずかな時間だけでも顔が見れるとホッとしたし、時々アップルパイを焼くと研磨は子どもみたいに喜んでくれた。
 それぞれの家庭で自然と身についた習慣をすり合わせるのも楽しかった。好きな人の知らない一面を知るのはいつだってわくわくする。
 二人を邪魔するものはもう何もなかった。たくさんキスをして、初めて身体を重ねた日。なにもかもが幸せだった。

 研磨の申し出を断って、生活費は折半にしてもらう。金銭面で甘えるために同棲するわけではないし、対等な関係でいたかった。
 でも、現実は厳しかった。
 疲労が蓄積して腱鞘炎になり、次に腰を痛めた。バイトに行けない日が続くと貯金を切り崩した。徐々に減っていく数字はじわじわとわたしを追い詰める。
 研磨には言えなかった。両親に無理を言って始めた同棲や、通わせてもらっている専門学校の奨学金。まだ十九歳のわたしには未来が果てしなく遠く感じた。
 嗜好品や日用品から少しずつ節約した。
 近所のスーパーで値段も気にせずエナジードリンクをぽいぽいカゴに放り込んでいく研磨を見ると、胸が騒いだ。


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