【 専門学校二年生 冬 】
 
 卒業制作でお菓子の家を作った。
 両手いっぱいのオーブントレーにタルト生地を敷き詰めて、クッキーの家を建てる。二階建ての三角屋根にはアイシングで模様をつけた。部屋のなかに仕込んだジュエリーライトが点灯すると、板ゼラチンの窓から暖色の光が透けて煌めく。
 写真を見せると研磨は目を丸くして「すごっ……」と言った。先生や生徒からの評判も良く、展示会では感嘆の声が漏れ聞こえていたらしい。
 うれしかった。なのに、むなしかった。
 時々、校内でもKODZUKENの名前を耳にするようになった。そのたびに、わたしは追い込まれるような気持ちになる。

 十数年ぶりに童話を読んだ。
 ヘンゼルとグレーテルは道に迷って、魔女が作ったお菓子の家に閉じ込められる。ヘンゼルが魔女に食べられそうになると、グレーテルは窯のなかに魔女を押し込んで焼き殺してしまう。グレーテルは、なんて勇敢な女の子だろう。



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