【 社会人一年目 夏 】
パティスリー・スヴニールという洋菓子店に就職が決まり、パティシエ見習いとして働き始めた。
覚悟はしていたけど、一年目の仕事は主に雑用だった。食器洗いや掃除、片付け。それから仕込み──といってもひたすらフルーツの皮むきや卵を割るだけなので、やりがいはあまり感じない。
それらをこなしながら、仕事を覚える。当然、先輩から丁寧に教わる時間なんてなく、見て覚えて、休憩時間や終業後に自主練をしなければならない。
朝は六時までに出勤して、帰宅は二十二時をすぎることも珍しくなかった。研磨の配信も二十二時頃始まって、それから編集するので朝は遅くまで寝ていることが多い。すれ違い生活。一度も顔を合わせない日もあった。さみしいと思う暇もなく、いつの間にかそれが普通になっていった。
← back →