【 社会人二年目 春 】

 クリスマスシーズンは地獄を見たけど、春になると二年目ということもあり、ちょっと落ち着いてきた。
 モンハンの新作が出たらしい。シリーズ完全新作。研磨がうきうきと目を輝かせて、「名前も買おう」と誘ってくれたけど、結局買わなかった。
 あんまりやる時間もないし、操作方法もすっかり忘れてしまったので、なんとなく乗り気になれなかった。
 それに研磨だって、他のゲーマーと遊んだ方がいいに決まってる。わたしみたいな素人とやったってつまらないだろう。

 職場に高校時代の友人がやってきた。ちょうど空いている時間帯だったので、ショーケースの前に出て接客させてもらう。

「そういえば孤爪くんとまだ続いてるの? すっごい有名人になっちゃったね、彼。KODZUKENだっけ?」

 その会話がたまたま後ろにいたアルバイトの耳に入り、たちまち職場に広まった。絶対外には漏らさないと言ってくれたけど、それよりも、みんなのわたしを見る目が変わったのがこたえた。
 「すごいね、彼氏」「いいな〜玉の輿」「パティシエなんか辞めて仕事手伝ってあげればいいのに」
 今までわたしが頑張ってきたことよりも、研磨ばかりが認められる。
 専門学校時代は交際を隠し続けることにストレスを感じていたけど、おおやけになったところでまた違う苦痛があった。八方塞がりだ、と思った。

 それからは入社したての頃のようにがむしゃらに働いた。日付が変わるまで練習した。寝不足で体調を崩した。でも、無理やり踏ん張った。負けず嫌いに火がついて、絶対一流になってやるという思いがますます強くなった。ナッペも絞りも見違えるほどに上達したと我ながら思う。楽しいかどうかはわからない。



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