【 社会人三年目 春 】

 バレンタイン期間に、見習いパティシエの商品を販売することになった。
 系列店の同期を含む見習いの十数名がチョコレートメインの創作スイーツを考案し、投票によって選ばれた一名の商品が店頭に並ぶ、という企画。
 自分の考えたスイーツが店頭に並ぶなんて、夢みたい! 絶対に絶対に選ばれたい──!
 わたしは張り切って、すぐにデッサンに取り掛かった。同期や後輩たちは良きライバルとして、終業後の厨房で共に試行錯誤を重ねた。
 ココアのタルト生地と、ガナッシュクリームにオレンジを忍ばせたタルトショコラ。試作を繰り返し、何度もブラッシュアップした。
 企画のことは研磨には黙っておいた。
 サプライズ。わたしの作品が店頭に並んだとき、あっと驚かせたいと思った。
 きらきらと瞳を輝かせる研磨の表情を想像すると、孤独な戦いもがんばれる気がした。



back