【 高校二年生 夏 】

 ──なりすましって知ってる?

 2≠フ正体について説明してくれた孤爪くんの話を、わたしはほとんど聞いていなかった。
 KODZUKEN2≠ェニセモノであることは、KODZUKEN本人が一番よくわかる。それは当然のことだった。
 証拠として見せてくれたPSPの画面にはまごうことなきKODZUKENの姿があった。危うく気絶しかける。
 そうか、KODZUKEN──孤爪研磨。どうして気づかなかったのだろう。まさか同じクラスに神がいたなんて。
 ようやく心を落ち着けたわたしは、「ファンですっ!」と握手を求めた。不本意な展開に顔を歪めた孤爪くんの頬には、だから言いたくなかったのに、と書いてあった。


 すると、わたしと孤爪くんが仲良くなるのは必然だった。
 モンハンはもちろんフレンド登録して、ほとんど毎日一緒にゲームをして遊んだ。
 救難信号を発射するとすぐに駆けつけてくれる孤爪くんはヒーローだった。携帯電話を繋げて、布団をかぶって、夜遅くまで狩りに出かけた。
 最初はよそよそしかった孤爪くんも徐々に心を開いてくれて、「次、負けたら奢りね」とジュースを賭けるようになったり、「苗字さんは詰めが甘いんだよ」と手厳しく指導してくれたり、うれしかった。

「ねぇ、なんでCAKEGURUGURU≠チて名前なの?」

 孤爪くんがちらりとわたしの顔色をうかがう。

「ケーキ屋さんでアルバイトしてるの。わたし、ひたすらケーキのラッピングしてるから」

 そして、「あーあ、明日もバイトだ」と愚痴をこぼすと、「そっか。おれも部活」と言うのだった。

 バイトなんて行きたくなかった。孤爪くんも部活なんて行かなければいいのにと思った。

 ふと思い立って、こっそり体育館を覗きに行ったことがある。やる気がなさそうな孤爪くんが、でも真面目に練習しているのを見て、そもそもわたしがバイトを始めたのはケーキが好きだったからだということを思い出した。
 ケーキをラッピングするとき、ひとつひとつに思いを込めるようになった。お客さんが透明フィルムをぐるぐる剥がすときのことを思い浮かべながらぐるぐる巻き付けると、少し楽しくなってきた。

 夏休みにモンハンの展示会があって、一緒に観に行った。私服姿の孤爪くんと並んで歩くのはなんだか落ち着かなかったけど、カフェで向かい合って座るのはもっと落ち着かなかった。「なんかデートしてるみたい」って言ったら、ちょっと変な空気になった。


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