野良猫とクッキー、と。
「……何だ、これ」
「クッキーです」
「そんなこと、見りゃわかるっつーの」
ナギは出勤早々、ルシルから小包を渡されて、今日が感謝祭だということを思い出した。諸事情から朝食を食べ損ねたのを理由に、その場で許可を取って開けたのはいいが、出てきたものに思わず疑問が口をつく。
可愛らしい包装の中から出てきたのは、一般的な型抜きクッキー。見た目も匂いもおかしくはないし、味にも特に問題はないだろう。
しかし、猫と魚を模した形状に、他意を感じる。
「……お前、これカーディナルにも?」
「はい、渡しましたよ?」
「そうか、勇者だな」
日頃から近寄りがたい雰囲気を纏うカーディナルに、平気で『野良猫っぽい』だの『かわいい』だの連呼して渋い顔をさせているが、ここまでくると嫌がらせに近いかも知れない。ついでに悪意が全くないところが、カーディナルからしてみれば厄介だろう。清々しいくらいの、文字通り『純粋』な嫌がらせ。
今回のクッキーにしても、ルシルは何となく形を決めただけに違いない。それを裏付けるように、ナギの前で「この形、かわいくないですか?」と屈託のない笑顔を浮かべている。もっとも、型を選ぶ過程でカーディナルが脳裏をよぎったかどうかまでは知らないが。
「……反応が気になるよな、これは」
クッキーで出来た猫をつまんで、呟く。ルシルを前にしたときのカーディナルの、苛立ったような呆れたような何とも言いようのない表情が思い出されて、思わず笑いが込み上げた。
「ナギ先生?」
「いや、何でもねー」
不思議そうに訊ねてきたルシルに首を振って、ナギは誤魔化すようにクッキーを口に放り込んだ。
fin.
2011/08/30:公開
2019/01/14:修正
name thanks!!
⇒カーディナル(翡奈月あみ さま)
