闘争心と挑戦状
たまたま通り道として利用した大学部の校舎。その廊下で、窓枠に肘をつきながら校内の見取り図を広げているユーフェミアを発見したリゥシャオは、思わず足を止めた。
「……ユーフェミア、何やってるの?」
「あら、シャオ。こんなところで会うなんて、珍しいわね。何って、感謝祭の準備よ」
にっこり笑う姉の言葉に、リゥシャオは不思議そうに首を傾げる。
「……ユーフェミアって、そういうことするタイプだったっけ〜?」
おしとやかな容姿に反して精神面は体育会系のそれであるユーフェミアは、感謝祭に浮かれるような人種ではなかったはずだ。万が一、渡したい教師がいたとしても、規則通りに職員室へと投げるだろう。尤も、そんな事態は危険すぎるから阻止するけれど。
「違うわよ、ただの手伝い。クラスの子に頼まれたの」
「へぇ〜?」
あっさりしたその返答に、特に疑問も持たずに納得する。彼女の性格と実力を考えれば、そういうこともあるだろう。
「……ちなみに、誰狙い?」
同情心と半分の好奇心から、訊ねてみる。ユーフェミアは姑息な手を使ったりはしないが、諦めが悪い。やると決めれば何事に対しても全力を注ぐため、追われる教師が無条件で可哀想だ。
「ふふっ、ツカサ先生よ」
「えぇ〜……」
ユーフェミアの口から出た名前に、思わず情けない声が出る。体術教師であるツカサには、選択授業で少なからず世話になっている。そんな彼に身内が迷惑をかけるのかと思うと、居た堪れない。
せめて事前に教えてあげようと心に決めて、ユーフェミアに背を向けた。
「シャオ」
「な、なに!?」
直後にぴしゃりと名前を呼ばれて、即座に振り返る。
自分の考えを見透かして文句でも言ってくるのかと慌てて身構えれば、ユーフェミアはただ楽しそうに笑った。
「ツカサ先生に、本気で追うのでよろしくって、言っておいてね」
闘争心剥きだしの青い瞳に見据えられて、反射的に視線を逸らす。
「……はぁい」
素直に返事をしたリゥシャオに、満足そうに微笑んだユーフェミアは、見取り図へと視線を戻した。
挑戦状代わりの伝言を頼まれたリゥシャオは、参ったなぁと息を吐く。
そして、今度こそユーフェミアに背を向けて、伝言を果たすべく職員室へと向かった。
fin.
2012/06/03:公開
2019/01/16:修正
name thanks!!
⇒ツカサ(翡奈月あみ さま)
