神の涙で満ちた箱庭



お茶会をご一緒に


「あ、きーちゃんだ〜」

 通りすがりにふと覗き込んだ、放課後の教室。
 まだ明るいその空間に、参考書を開くクラスメイトの姿を見つけて、リゥシャオは声をあげる。やや間延びした口調で愛称を呼べば、クラスメイト──キリンは顔を上げた。

「こんにちは、きーちゃん。放課後にまで勉強してるの?」

 偉いよねぇ? と屈託なく笑いかけるリゥシャオに、キリンは少し反応に困った様子を見せながらも淡々と返す。

「そう、かしら」

 そうだよ〜、と頷くリゥシャオが教室に踏み込んだ途端、甘い香りがふわりと舞う。教室には似つかわしくないバニラのようなその香りに、キリンは訝しげな表情を浮かべた。
 キリンの怪訝な様子に気付いたリゥシャオは首をひねり、すぐに理解したのか手に持っていたバスケットを掲げてみせる。

「匂った? 家庭科室借りて、さっき作ったんだよー」

 そう説明すれば、納得したのかキリンは表情を元に戻す。作ったというリゥシャオの言葉には、少し感心した様子を見せながら。

「あ、そうだ。これからお茶するんだけど、きーちゃんも一緒にどう?」

「え……?」

 唐突なリゥシャオからの誘いに、今度は困惑したように眉をひそめるキリン。少し悩んで、小さく首を横に振った。
 遠慮するようなその様子に、リゥシャオは首を傾けた。

「もしかして、用事ある?」

「別にない……けど」

「甘いもの嫌い?」

「……嫌いじゃない」

 けど、と再度キリンが続ける前に、リゥシャオは笑う。

「じゃあ、一緒に食べよう?」

 言葉自体は疑問形なのに、有無を言わさず手を引かれる。振り払うことも出来ずに立ち上がり、そのまま外へと連れ出されれば、壁も天井も取り払われて、真っ青な空が目に入った。眩しさに目を細めて、キリンは空を仰ぐ。
 気付いたリゥシャオも、同じように空を見上げた。

「空、青いねぇ?」

 そう笑顔を浮かべるリゥシャオにつられるように、キリンの頬も僅かに緩む。
 無意識のうちに強く握りしめていた手から力を抜いて、小さく頷いた。





fin.
2012/11/20
2021/05/29:修正

thanks!!


⇒キリン(翡奈月あみ さま)

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