神の涙で満ちた箱庭



ありがとうの魔法


「エフィちゃん、『ありがとう』は?」

 持ち主の指をすり抜けて、スイレンの足元に降ってきた一枚のプリント。拾って差し出したそれを無言で受け取った落とし主──エフィに、スイレンは不思議そうに首を傾げた。
 対するエフィはいつも通りの無表情で、ただ視線を合わせてくるだけだ。
 そんなエフィの様子に、彼には『わからない』のだと理解したスイレンは、んー、と顎に指を添えて少し考える素振りを見せる。

「サツキちゃんがね、『ありがとう』と『ごめんなさい』は大事だよって教えてくれたの。それに『ありがとう』は言われた人も嬉しくなるんだって」

 自分の説明に納得がいったのか、スイレンは頷いて続ける。

「だから、エフィちゃんも何か親切にしてもらったら、『ありがとう』って言うといいよ!」

 拙い説明をそう締めくくり、真っ直ぐにエフィを見つめるスイレン。
 その期待するような視線をエフィは無言で受け止めていたが、暫くして求められている答えにたどり着く。

「……ありがとう」

 ぽつりと口にしたエフィに、どーいたしまして!と明るく返して、スイレンは嬉しそうに微笑んだ。





fin.
2012/11/29:公開

神の涙で満ちた箱庭
七つの水槽