神の涙で満ちた箱庭



小さなお願い


「あの……リッタ?」

「なーに、アズくん?」

 昼休み、図書館に一緒に行ってくれない?
 ただそれだけを聞きたくて、アズはファルリッタに声をかけた。
 しかし、いざ言おうと思ったものの、色々な考えが邪魔をして、言葉が口から出てこない。
 ファルリッタには既に約束や予定があるかも知れないし、困らせてしまわないだろうか。それに、図書館に行くくらいで他人に同行を求めるなど、そんな子供っぽいことをしてもいいのだろうか。そもそも、これはただの我儘ではないのか。自分を普通の子供とは違うと信じている親が見たら、一体どう思うだろう──?
 こんな時に限って、いつもより回る自分の頭が嫌になる。吐き出しかけた溜息を喉の奥で押し殺して、頭を振る。
 何でもないと話を終わらせようと顔を上げれば、合わせたかのようなタイミングでファルリッタが笑った。他の下級生に向けるものと同じ屈託のない笑顔は、言っていいよ、と促してくれているような気がして。

「……お昼休み、に」

「うん?」

「一緒に図書館、行って、くれな、い……?」

 普段は澱むことなく淡々と言葉を紡ぐアズの口から出た、たどたどしい言葉。控えめに発せられた小さなお願いに、ファルリッタは笑顔で頷いた。

「もちろん、いいよ!」

 よくできました、とでもいうようにファルリッタに頭を撫でられて、アズは少し困惑したようにうろたえる。
 それでもファルリッタが困った様子ひとつ見せないことに安堵して、子供のように、少し笑った。





fin.
2012/11/29
2021/05/29:修正

thanks!!


⇒ファルリッタ(翡奈月あみ さま)

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