神の涙で満ちた箱庭



とある軍人の憂鬱


 シェイが訓練生の総監として学院への入学を命じられたのは、つい先程のこと。任期は卒業までの数年間。今さら学生生活なんて──そんな思いが頭を占めるが、上官命令だと言われてしまえば黙って敬礼を返すしかない。渋々ではあるが、了解した。
 しかし、納得は出来ない。

「……今さら、学生生活なんて」

 思わずシェイが口から零した本音に、隣を歩いていたハンスが首を傾げる。

「あれ? シェイは勉強が嫌い?」

「勉強は、別に嫌いじゃないけど。ただ学校とか行ったことないし……試験とか面倒くさそうだし……」

 そうため息を吐くシェイの肩を、励ますようにハンスが叩く。

「あははっ。ま、頑張って」

「……他人事だと思ってるだろ」

「他人事だもーん」

 そう言って笑うハンスの呑気な顔が、今日ばかりは憎らしい。軽く睨むように視線を向ければ、気にした様子もなく微笑まれた。

「いいじゃない。行っておいでよ、学校。きっと楽しいよ?」

 行ったことないけど、と屈託のない表情を浮かべるハンスに、言葉に詰まる。それでも言い返すべき言葉を探して。

「……わかってるよ」

 見つけられずに、ただ、小さく頷いた。





fin.
2012/11/30

神の涙で満ちた箱庭
七つの水槽