Crack Clock



聖女の祝福〈side:Gerd〉


「──では、問いましょう」

 黄昏色に染まる景色の中、静かに言の葉が紡がれる。
 対面する彼女はくすんだ色の世界の中で、どこまでも純粋で綺麗な笑みを浮かべていた。注がれる視線に捕われて、まるで、自分までもが世界から切り取られたような感覚に陥る。
 日常の喧騒が遠く聞こえて、澄んだ声だけが鼓膜を揺らす。

「汝、力ある者として、
 喩えその身を滅ぼそうとも
 我が愛を受け入れ、
 秩序を愛する者たちに
 等しき愛を与えることを、
 神の御前に誓いますか?」

 穏やかなその問いかけに、答えを口にするだけならば、酷く簡単で呆気ない。
 それでも、はっきり誓言した。
 ──是、と。

「貴方がこの世界を愛する限り、私も貴方を愛しましょう。日々、健やかにあれ」

 自分の手を取り、慈しむように笑いかける彼女の姿は、正に《聖女》。
 その笑顔ひとつで、汚れた世界も綺麗に見える気がした。





fin.
2012/07/22 公開
2018/10/19 修正

Crack Clock
七つの水槽