挑戦と日常
言い争いにより騒がしくなったデスクから離れた日生。来客用の長椅子へと避難すれば、小さなボールを器用に指先で遊ばせる朱右介が笑顔で出迎えた。
「ひなちゃんってば策士〜」
上手く場を濁して退散してきた日生に、朱右介の向かいで京太郎も同意するように頷く。
「要領がいいというか、何というか」
「それほどでも。朱右くんと京くんには劣るよ」
京太郎の隣に腰を下ろして、日生は首を振った。謙遜でも何でもなく、頭を使えばこの二人には勝てないだろう。
「で、今日も京くんは朱右くんに挑戦中なのかな?」
「当然だよ。彼が使っているのが物理トリックである以上、見破れないわけはないからね」
訊ねた日生に、再び頷いた京太郎。その視線の先は朱右介の手元に注がれていた。
京太郎と日生の二人が手元を注視する中、朱右介が指先のボールをくるくると動かす。2つになり、3つになり、再度2つになって1つに戻った。
「種明かし、一緒にやるかい?」
「お、ひなちゃんも挑戦する〜?」
京太郎に誘われて、滑らかに指先で動くボールを再度じっと見つめる。しかし、瞬きさえ我慢して目を凝らして見ても、増減するタイミングは全く掴めない。
「……見破れる気がしないから、見学にしとくー」
お手上げだというように肩をすくめた日生に二人は笑って、再びボールが動き始めた。
〈続〉
2012/12/28
thanks!!
⇒ 穂村 朱右介(ショウ さま)
⇒ 神津 京太郎(あさぎ さま)