三話
私には両親がいない。幼い頃、五歳ぐらいか?事故に遭って死んでしまった。
別にあまり両親という感覚はなかったが、こんな私を育ててくれたことに感謝しているし、死んでしまって悲しいとも思った。
それからは母方の祖父に引き取られた。その人は社会的に地位のある人で、私は比較的裕福にしかも自由に過ごせた。
それというのも、祖父は一人娘の母が死に、妻である祖母が死に、血の繋がった家族が私だけだからなのか、私に甘い。
祖父を困らせまいとほとんど我が儘らしい我が儘を言わなかったが、祖父は甘やかそうと頼んでいないのに色々なことをしてくれたしくれた。それ自体はとてもありがたいことなのだが、祖父の優しさがたまに空回りするのことがありそれだけはいただけない。なまじ私のためを思ってのことなので文句も言えない。
私はそんな祖父が好きだし、困らせたくない。悲しませたくないと思うほどには執着している。
さて、話は変わるが私はあまり目立ちたくない。だからこそ日頃自分の実力をセーブして隠しているが、祖父はそれに気がついている。まあ一緒に住んでいるし鍛錬を見られたりするから当たり前と言えば当たり前だ。
なぜ目立ちたくないかって?そんなこと決まっている。面倒だからだ。
けれど私は自分より劣っている人物に下に見られたり、他人になめられたりするのは我慢できないので、その辺りはきっちりとしめている。
話を戻そう。
私は目立ちたくないという思いもあり、なによりヒーローになど興味はなかったのでヒーロー科を進めてきた祖父を断り、国立の普通科に進学した。
そこでも今までと変わらず周りと一線を引いている自覚はあるが、仲良くなるつもりはない。
将来はこのまま公務員や弁護士辺りになるか。あ、医者もいいな。などと思っているときにそれはおこった。
そう、私は忘れていた。
祖父は私のことを思うあまりたまに検討違いなことをしでかすことがあると。
そして私がヒーロー科には進学しないといったとき、祖父は悲しそうに顔を歪めていたことを。
なぜ気がつかなかったのか。
後悔してももう遅い。
(日常の崩壊の足音はもうすぐそこ)