過去と忍びと今とヒーロー
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  • 六話



    浅間由紀の編入試験は、簡単に言えばいきなり攻撃された場合どうでるか。というものだった。雄英教師が相手になるので勝てるとは思っていない。だがどういう行動かで評価するのだ。
    そのためにわざわざ向こうの高校に浅間を下校時間ギリギリまで引き止めさせ、その間に他の事務員教師生徒を引き上げさせた。
    万が一に備え監視カメラを設置して校長が監視し、相手をする教師だけでは評価が偏る場合があるということで後日他の教師陣も観て全体で決めるという話だ。



    「何でこいつ普通科なんだ?」

    見終わったあと、開いた口が塞がらないなかで誰かが発した第一声がそれだった。

    その言葉を皮切りに次々と言葉が飛び交う。

    「え、あの壁に突き刺さっているのってボールペンですよね?ボールペンってあんな風に突き刺さりますっけ?あれコンクリートですよね?え、え、僕の目がおかしくなったんじゃないですよね」
    「大丈夫だ13号。俺もそう見える」
    「なんで今まで誰にも騒がれなかったんだよ……」
    「これ合格でしょ、弾く理由がない」


    『ドゴォン』

    《次に会ったら絶対に潰す》


    「…………」

    流れっぱなしだった映像が、浅間が拳を叩きつけた壁がへこみ音が聞こえるんじゃないかというほどに奥歯を噛み締め、相澤が去っていった方を射殺さんばかりに睨み付けている浅間の姿を写し出すと、室内中の同情の視線が相澤に集中する。

    「まぁ、ドンマイ」
    「次にあったときに殺されないようにするのよ」
    「アノ場デ正直二話シテシマエバヨカッタノダ」
    「…………コンクリートを素手で壊せる拳で殴られたら人間簡単に砕けるな」
    「あんたら、他人事だと思って……」

    今回の試験は言い出しっぺということで相澤が他の教師に押し付けられたものだが、そのことで確実に浅間は相澤を敵と認識した。
    次にあったときのことを考え、今から頭痛がしてきた。


    「じゃあ彼女の編入試験への参加はOKということでいいね!」
    「それは勿論ですが、彼女は他の編入生と同じ試験で大丈夫なんですか?」
    「確かに……実力がないというわけではなくその反対。ありすぎるからこそ今同じ試験を行っても逆に他の生徒を潰すことになるんじゃ……」


    最初は彼女の実力が見合うのかどうかということで揉めた。今度はその逆で実力がありすぎるからこそどうするのか揉めることになった。


    「う〜ん……やっぱりそうだよねぇ」
    「というか、彼女は今回の件を知っているんですか?」
    「なんで?」
    「いや、実際に相対した感想だと、わざわざ編入してまでヒーロー科に入りたがるとは思えないんですよね」
    「いや〜。推薦したのこの子の祖父だよ?さすがに話だって、通ってるかな?」


    相澤の言葉に一気に不安になる校長。


    「まぁいいや!とりあえず彼女は合格!また来るように書類も渡したんでしょ?ならその時に改めて考えよう!」


    問題を先送りにしたたけなような気もするが、一応の結論が出たために解散となった。








    彼女が雄英高校の門をくぐるまで、あと___。


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