降矢くんちの息子さん


ネタ帳の『降矢くんちの息子さん』でお試し


「やあコナンくん」

観覧車に取り付けられた爆弾を早く取り外さなければ、爆破されれば観覧車が落ちてしまう。その為に安室と赤井を起爆スイッチの場所まで案内しようとした瞬間。今この場で聞こえるはずのない声が聞こえ慌ててそちらを見る。
そこには、目の前にいるポアロと組織と公安のトリプルフェイスを使い分ける彼と瓜二つ。むしろ彼をそのまま小さくしたような子供がいた。唯一違うことといえば、彼はニコリともせず愛想笑い一つない完全な無表情だということだ。

「晃兄ちゃん!?なんでこんなところに!」
「これ、あげる」

こちらの疑問も安室と赤井の視線もすべて無視して彼は何か機械をこちらに渡した。その何かが分かった時、驚愕した。

「爆弾の起爆スイッチ。俺は必要ないからあげるよ」
「え、だって、はぁ!?」
「おーい晃!」

もう一つ声が聞こえたかと思えば、いきなり何かが降ってきた。警戒するが、その正体に気がつけば本日何度目かの驚愕。

「和也。首尾は?」
「上々!あ、コナン!これやるよ!」

晃の親友である和也が、彼とは正反対の満面の笑みで大きなバッグを渡してくる。ふらつきながらも受け取るが、嫌な予感が。

「観覧車につけてあった爆弾!手動でスイッチ入れればまだ爆破できるから気をつけろよ!」

嫌な予感的中。そんなものを渡さないでほしいし、笑いながらいうことでもないと思う。

「て!なんで二人はこんなところにいるの!!」
「なんでって」
「師匠の指示だ」

晃の言っている師匠とは、彼ら二人を引き取っている人のことだ。何やら色々なことを教わっているらしく、それぞれ師匠やマスター呼び慕っているのを知っている。

「君達。ここは危ない。早く外に出なさい」
「そういう訳にはいきません。師匠のいいつけはまだ終わっていない」
「子供がこんなところで一体何を出来るっていうんだ……!」
「俺たちには俺達のすることがあります。部外者は引っ込んでいてください」
「晃!」

安室さんが焦れたように怒鳴ったが、晃はまるで意にもかえさない。
どうみても晃は安室さんの息子なのだが、本人は名乗れる立場ではないけれど、その存在を知ってからは何かと構っているのだが、晃は全く興味無さそうにしている。

「爆弾を解体したのは、君たちか」
「そうでーす!」
「驚いたな。その年でそんなことまで出来るのか」
「あまり難しいことではありませんよ」
「そうそう!観覧車の上で乱闘騒ぎ起こす方が凄いですよ!」

赤井の言葉にも、二人は特に何も思っていないような言葉を返す。
歩き始めた二人に、どこに行くのかと問えば歩きながら話そうと言われてしまい、ついて行くしかない。

「奴らは上からキュラソーが乗っているゴンドラごとヘリで持っていくつもりです」
「UFOキャッチャーみたいにな!」
「僕らがここにいるのは、師匠から奴らの企みを阻止するように支持を受けたからです」
「ノックリストを持った記憶媒体はキュラソーの脳!だから彼女を連れていかれた時点でゲームオーバー。簡単だろ?」
「その師匠とやらは、一体何者なんだ?」

赤井さんの問に、二人は顔を見合わせる。

「傭兵あがり?」
「軍人もどき?」

しかしどれもピンとこないのか、首をかしげて悩む。あ、と思いついたように手を叩き。

「「化け物」」

口を揃えて言った。

「まあ何にせよ、話はまた今度に」
「今のところの問題は奴らだしな!」

ローター音が響き、空を見上げれば奴らが乗っているだろうヘリが僅かに見えた。

「とりあえず、アレ落とすぞ」
「徹底的に完全に!な!」

一人は無表情で。一人は満面の笑みで。正反対の反応を示しながらも、その目は獲物を狙った狩人のものだった。



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はい。純黒での一場面です。
ここに至るまでに二人は師匠から仕込まれた身体能力と技術で大人顔負けなことをしでかしていろいろな場所から目をつけられているといいな。

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