見た目と年齢は必ずしも合致しない


とりあえず今後生活する上で話し合いをしようと、後ろで立っていた重、舳丸、鬼蜘蛛丸、義丸を二人がけのソファーにそれぞれ促す。
最初に蜉蝣と疾風が座ったように、恐る恐るといったふうに座り、そのふわふわ感に驚愕の表情をあらわにする。

「あにき!ふわふわ!」
「ああ……凄いな」

重は年相応に興奮し、他の三人もソワソワと落ち着かなそうにしている。

「そういえば、あんたら歳いくつ?」

ふと疑問に思って質問すれば、返ってきた答えは予想外すぎてつい聞き直してしまった。

「………ごめん。今なんて言った?」
「だから、俺と蜉蝣は20で」
「俺と義丸は14です」
「俺は12です」
「おれは6才!」

聞き間違いなんかではなくてつい頭に手をやってうなだれる。
昔の人って今より精神年齢が高くて、実年齢よりも上に見えるとは思ってたけど、にしては予想外。

「桐生さんは一体いくつなんですかい?」
「おいヨシ。女性に年齢を聞くのは失礼だぞ」
「いや別にいいよ。そういうの気にしないし」

義丸が私の年齢を聞いてきたことに鬼蜘蛛丸が注意するが、別にそういうことを気にするようなデリケートな心は持っていない。それでもこの流れで言い難いなとは思っているから、つい数字のところが小声になる。

「あーと、………28」

けれど彼らにはバッチリ聞こえていたのか、重以外固まった。

「姉ちゃんどうがんってやつだ!」
「重。ちょっと来い」
「ひぇっ!」

ビシッと指を向けていい笑顔で言い放った重を手招きすると、怯えた声を出して舳丸の後ろに隠れてしまった。

「マジかー。蜉蝣と疾風でも八つも下なのか」
「………すみませんでした」
「いいよ。今更敬語でも気持ち悪いだけだし。どっちでも気楽な方にすれば」

蜉蝣が顔をひきつらせながら謝ってきたので、そういえば目に見えてホッとしていた。

「でも義丸と鬼蜘蛛丸はもう少し上かと思ったけど、まあ予想の範疇。だけど蜉蝣と疾風は同い年ぐらいだと思ってたよ」
「兄貴たちより上なのは正直驚きましたよ」
「言っておくけど、私が幼く見えるんじゃなくて、あの二人に貫禄があるだけだからね」

改めてマジマジと二人を見れば、歳を聞いた後でもまったく見えない。自分の年と顔の似合わなさは別に気にしていないけど、他人に言われると癇に障るのだ。

「ま、とりあえずここで生活する上で絶対に守ってもらいたいことがある」

全員が緊張したように居住まいを正す。

「私の商売道具に手を触れないことと、仕事部屋には入らないこと。これさえ守ってもらえれば基本好きに過ごしていていいよ」
「それだけ、か?」
「うんまぁ細かいところはおいおいね。ただ、私の商売道具は危ないものも多いし、仕事部屋には商品もある。だから万が一触って怪我したら危ないし壊したら大変だ」

そこで言葉を切ってお茶を飲めば、納得したように頷いた。

「特に重。お前は絶対にだ」
「なんでおれだけなざしー!」
「一番ちっこいから」

名指しした重が不満そうに頬を膨らますが、指でつつけば空気が出て笑ってしまった。そしたらますます不貞腐れてしまったようでそっぽを向かれてしまう。

「んじゃあ、話が一段落ついたところで朝ごはんにしようか」

私だけなら朝は抜くが、こいつらがいるのならちゃんと作らないといけない。だけど元々一人暮らしだから量が少ないんだよな。
なんて考えながら立ち上がると、手伝うといって重以外の全員が同じような立ち上がる。それを見て重も立ち上がるが、それは頭を押してソファーに戻した。

「いいよ別に。てかそんなにいらない」
「なら俺が手伝おう」
「ん。なら蜉蝣、お願いしようかな。他の奴らは好きに過ごしてな」

さすがにそんなに人数がいても邪魔なだけなのでそういえば、すかさず蜉蝣が名乗り出る。だがそれ以外の奴らは好きに過ごせとはいったけど、何をすればいいのか、はたまた遠慮しているのか動き出さない。それに私はリモコンを手に取りテレビをつければ、飛び上がりすぐさま距離をとって構えた。

「おー。さすが海賊。素早い」
「っ!桐生さん!これは何ですか!?」
「ひ、人が箱の中に入っている!?」

予想通りの反応に笑っていると、怖い顔で睨まれてしまった。

「これはテレビっていって、他のところで撮った画像を電波っていう目に見えない形で受信しているんだよ。この箱はただ画像を流しているだけ」

多分こんな説明で合っているはず。仮に違っていても分からないからまあ大丈夫。
そう説明すれば、まだビクビクしていたが、それでも目を好奇心いっぱいにさせて流れる番組を見る。蜉蝣も興味深そうにしていたが、名残惜しそうにしながらも手伝いに来てくれた。

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