「絶っ対、驚くよ!」
「そんなにすごいの?」
「うん!」
勇太が飛び込み、数十秒後美空も穴に飛び込む。
久々に滑って怖かったために、着地体勢に入るのが遅れる。
(あっ、やばっ)
「ミソラ、ヒサシブリ」
「……へ?」
「えへへ〜、成功!鋼鉄のクッションだよ!」
「ウマクイッタ」
思っていたよりも軽い衝撃で済んで驚く。
通気口から少し距離を空けたところに待ち構えていたデッカードの掌が、勢いづいて飛び出してきた美空を受け止めたのだ。
「すごっ…凄いじゃんデッカード!ありがとう、嬉しいよ!」
「やったねデッカード!」
「ヨカッタ」
成功率50%。
「あ…デッカードったらぁ!秘密にしておけばいいのに!」
「失敗してたら…」
(床にダイブしてるとこだった…)
ちょっとビビる美空。でも、
「二人で練習したの?」
「うん!」
「シュミレーション、ハンプクカイスウ20カイ」
「昨日は失敗しちゃったから、心配だったんだ…」
「そっか……二人は土壇場、いざという時には強いんだねきっと。ありがとう勇君、デッカード」
「えへへっ!」
「ドウ、イタシマシテ」
それからは久々に3人揃って、最近あった出来事を互いに楽しくおしゃべりした。
「あ〜おもしろい…って、勇君!もう7時30分過ぎてる!」
「うわぁー!くるみ姉ちゃんに叱られちゃう!帰らなきゃ!」
門限が過ぎていることに気づいた美空は勇太に時間を教えた。美空は焦り急いで置いていた鞄を取り通気口に走る。
通気口の側にいた勇太は、先にデッカードに持ち上げてもらっていた。
「ねぇデッカード、今日はそろそろ帰るね。それじゃあ入り口までボクを運んで」
「リョウカイ」
静かに両手の平で勇太を持ち上げ運ぶデッカード。
ところがデッカードから微かなノイズ音が聞こえ、勇太が心配する。
「どうしたの?」
返事をしないデッカード。それに気づいた美空も様子を足元で伺う。
「…デッカード?大丈夫?デッカード」
「ボクを降ろして?」
「リョウカイ」
スムーズに降りてくる勇太。表面上機構の問題はなさそうだが。
「もしかしたら、故障してるんじゃない?」
「ワタシハ、正常。タダシ、超AIに乱れが生じることがある」
「えぇ!?」
まさかの事実に驚く。
「それはどんなとき?」
「キミと、ミソラと離れるシュンカンダ」
「あらら」
「ふぅ〜ん…それってもしかして、寂しいんじゃないの」
少し嬉しそうに言う勇太。
それを微笑ましく見つめる美空。
「理解不能、"サビシイ"トハ、ナニカ」
「うぅ〜ん…寂しいっていうのは、一人ぼっちで悲しいみたいな気持ちのことかな?」
「"カナシイ"トハ、ナニカ?」
「えぇっと難しいなぁ…えぇっとねぇ〜えっと、悲しいは悲しいだよ!分かんない?」
アバウトな説明にずっこける美空。
「いやいや!?分からないから質問したんでしょ…あのねデッカード。もし勇君が二度と此処に来ないって思ったらどう思う?…嫌だなって思ったら、それが"悲しい"だよ」
「分かりやすい!本当に先生みたいだね、美空お姉ちゃん!」
「あはは、ありがとう」
二人で笑っていると。
またデッカードの様子がおかしくなる。
「ワ、ワ、ワタシハ…」
「どうしたの?」
「勇太と、ミソラ…世界デ、一番……友ダち…」
「デッカード?」
美空は急いでデッカードの掌に近寄り、顔を見ながら様子を伺う。
「悲しい…好き、寂、しい……」
次々自分の気持ちを吐露するデッカード。
「友永勇太、白星美空。世界で一番大切。離れる…寂しい、悲しい」
「まさか、ボクと離れるのが寂しいっていうの!?」
美空は気づいた。
勇太に添えていたデッカードの掌が、勇太に寄り添い支える形になっていたことに。
「分かったよデッカード!ずっと、ずっと側にいてあげるからねっ、壊れちゃダメだよ!デッカードてばぁ!!」
「勇太…大切……友達」
そう言うとデッカードが動かなくなった。