準備運動練習中(1)

夏も終わり、勇太と美空は最近冷たくなった風に耐えながら"ヒミツの場所"へと足を運んでいた。
そしていつもの穴から滑り降りるが…

「「寒っ!」」

カーペットの無いむき出しの床は周囲の熱を奪い、寒かった。

「デッカード!」
「やぁ勇太、美空。今日はどんな事があったんだい?」

滑り降りてきた二人を順番に受け止めたデッカードは、早速今日あった出来事を聞く。

「今日は朝から寒かったよぉ〜!」
「うん。私は今日、学校の体育グラウンドで陸上競技だったんだけど…ほんと寒い寒い」
「ボクも体育したよ。先生も寒そうにしてたんだけど【スポーツの秋】だから頑張りましょうって、先生も一緒にサッカーしたんだ!」
「そうだったのか…寒いなら二人とも風邪を引かないようにしないとな」
「うん!」
「あと怪我もね…」

その言葉に二人が振り向く。

「体育で足首捻っちゃってさ‥」
「えぇーっ!大丈夫なの?美空お姉ちゃん?」
「湿布して冷やしてるから大丈夫。でも余計に寒い…」
「あぁ…」

そんな会話で勇太が思いついた。

「デッカード!デッカードも体育しよう!」
「私も?」
「そうだね…もし警察官として出動した時に、迅速に動けるほうがいいし。練習しない?」
「ね?練習しようよ!」
「……分かった。よろしく、二人共」
「「おー!」」

こうしてデッカードと体育をすることになったのだが。

「デッカードって、まずどれくらい動けるの?」
「ほとんど直立しているだけだから、分からないんだ」
「うーん。ちょっと歩いてみて!」
「分かった。やってみる…!?」

まずべたりと尻をつけて座り、その体勢から立ち上がろうとするデッカード。ところが片足を曲げただけで横に転がってしまう。

「…」
「…」
「…」

全員ポカーンとした表情で固まる。

「…っ、デッカード」
「コロンって…あははははは!」
「か、かわいい…ふふっごめんデッカード…超かわいかったっ!!」
「か…かわ……ゆ、勇太!美空!そんなに笑わないでくれ!」
「「あははははっ!!」」

寝転んだ状態のままの姿を見てまた笑う二人。
それに。

「ごめんごめん」
「だって…ねぇ勇君」
「うん。美空お姉ちゃん」
「?」
「デッカードの顔がいつもより近いから嬉しいんだもんね?」
「うん!」

デッカードの顔を覗き込んで言う。
いつもより近い距離に自然とテンションも上がるもの。

「わーいデッカード〜!」
「わーい!」
「こ、こら、二人共、私の顔の上から避けなさい!」
「アターック!」
「ぎゅ〜う!」
「わっま…うぷっ」

顔に抱きつかれデッカードは身動きが取れない。
嬉しそうに、楽しそうにじゃれる美空と勇太を無理矢理離す事も出来ない彼は、宥めるように二人の背中を優しく撫でるのだった。