美空が帰宅後すぐ、友永あずきとくるみ姉妹から携帯に連絡が入った。
「勇太がまだ帰って来ないんだけど、家に来てる?」
「え?今家に着いたけど…勇君居ないよ?」
「姉さん、どうしよう…」
彼がいない。
「私が探してくる。入れ違いになったら困るから、二人は家で勇君の帰りを待ってて」
「分かりましたわ…」
「うん。じゃあ」
通話を切り、靴を履き直して美空は玄関から飛び出した。
自転車に乗り街中を走り回る。
商店街、小学校、近くのコンビニや本屋にも寄るが勇太はいない。
「あ!」
焦りすぎて忘れてた。
「もしかしたら、デッカードのところかもしれない!」
(確かに勇君は可愛いからロリショタ好物な紳士やお姉様に狙われるかもしれないけど焦るのはデッカードのところに居ない場合に盛大にしようそうしよう)
焦りすぎて自分が焦っていることに気づかないまま、美空はデッカードのいる【秘密の場所】へと移動するのだった。
「遅いなぁ…美空お姉ちゃん」
「あぁ…そうだな」
出入り口に目をやり、俯くを繰り返す二人。
「デッカード…お姉ちゃんにも、同じ話を?」
「あぁ。記憶を消される前に、どうしても直接言いたかった」
「うん…」
返事をする勇太の目は赤くなっていた。
学校から此処に来た勇太に、デッカードからの大事な話は胸に、心に刺さった。
警察官として配備される際、デッカードの記憶は消されてしまうというのだ。
「……初めて会った時のこと、覚えてる?」
「あぁ、君はあの通気口から」
「ああーっ!」
「という風に…!」
その声に気づいた二人。急いでデッカードは滑り降りてきた美空を受け止めた。
「大丈夫かい美空?」
「ありがとうデッカード。…そうだ!勇君来てない?探してるんだけど」
「遅いよぉ〜美空お姉ちゃん!」
「何が遅いよだっ!」
いきなり怒鳴る美空に固まる勇太とデッカード。
「姉二人が心配していた。君が、勇太が帰って来ないって…何やってんだ!今度出掛ける時は二人に連絡入れてからにしろっ!!」
「はい…っ」
「帰るよ」
その返事を聞き美空は勇太の手を引き出て行こうとする。
その様子にデッカードが慌てる。
「待ってくれ美空!」
「デッカード。勇太君を家族の元へ帰さないといけないんだ。悪いけど話があるならまた明日に」
「明日じゃ無理だっ!!」
「っ!?」
ぶわんっ!とデッカードの大きな声がぶつかってくる。
彼の必死さが伝わり、幾分か冷静になった美空は足を止め振り向いた。
「もしかして、勇君が遅くなったのはその話があったから?」
「そうなんだ」
「う、うん…美空お姉ちゃんにも【今日必ず秘密の場所に来て】って、伝えるって言ってくれた人がいたから…頼んだんだ、ボク」
「そっか…。待っててくれたのに怒鳴ってごめんね…勇君」
「う、うん!」
そして謝りながら抱きついてきた勇太の頭を撫で、デッカードに話を促した。
「デッカードの話は?もしかして、配備される日取りが決まったとか?」
「…そうだ」
「それはおめでとう!…っあ」
「?」
「……」
美空の勇太を撫でる手が止まる。
気づいてしまった。
「美空」
「あ…で、デッカード」
うろたえる美空。
「…私は明日、正式に警視庁に配備される」
「!」
そして、
「その際人工頭脳、AIを初期化され…君達との記憶が消される」
「…っ!!」
「いつか言わなくてはと思っていた…今日で、お別れだ」
だから、直接伝えたかった。
その言葉に。美空は彼から伸ばされた指先にすがりつくことでしか、返事が出来なかった。