心を繋いで心が宿る(5)

写真の印刷を終えた彼女を待っていたものは、何も無かった。

「いじめじゃね?」

先程まで談笑していた皆はおらず。
完璧に完全に一人ぼっちな美空。
辺りを見回してみても人っ子一人いない。

「…こわっ!!」

大きな声を出して冗談っぽく笑ってみるが、だんだん不安がこみ上げてくる。
突然親しい人がいなくなる。
前の世界でも起こった”それ”に、美空は一人でいる今が怖くなってしまった。

(どうしよう、どうしよう…)

不安で辺りを何度も見回す。
焦っていた美空だが、辺りを見渡して気づいた。
お隣の友永家の明かりが灯っていることに。
誰か居るかもしれない。
その考えに行き当たった彼女は、すぐさま友永家のインターフォンを押した。

「あずきちゃ〜ん、くーちゃぁん」
「美空ちゃん?」
「うん…いやぁみんな居ないからびっくりしたよぉ!!」
「ごめんなさい。ご近所の皆さんと勇太が出掛けちゃって」
「え?」
「デッカードさんと力比べするって言ってたわ」
「力比べ?」
「えぇ、親方さんが張り切っていたけれど」
「ありがとう。探してみる」

場所を教えてもらった美空は、すぐさま親方さんの仕事場へ向かった。
敷地内入り口にいた四人を見つけ、駆け寄る。

「パト吉じゃなくてデッカードぉっ!!」
「どうしたの勇君?鳴き声みたくなってるよ」
「な、鳴き声じゃないよぉ!」

話しかければ、どうやら膨れ面をして拗ねていた勇太に追い討ちをかけてしまったようだ。
ぷいとそっぽを向かれ苦笑い。
視線を前に向ければ、地面にひざをついているデッカードと、機嫌のいい親方。

(あぁ、手加減したんだったねデッカード…)

作業用ワークボットを壊さないように気を使ったんだろう。
ロボットが気を使うってなんかすごい字面だ。
なんて思いつつ美空はデッカードと勇太を見比べる。
きっと勇太は、デッカードが負けたこともそうだが、ご近所さんとの仲の良さにも拗ねているんだろう。
美空は宥めすかしてみたが、結局勇太は車内でも家に帰っても拗ねたままだった。
さっさと降りていってしまった彼の背中にまた苦笑う。

美空は一人取り残された。
だがさっきとは違い、デッカードの中だ。一人でも怖くない。

(そういえば…彼の中で二人で語るのは初めてだ)

「はぁ…」
「おつかれさま。デッカード」
「ありがとう美空…君は」
「うん?」
「君は、勇太みたいに拗ねたりしないんだな」

拗ねる要素が無い。
美空は喉下まで来た言葉を飲み込んだ。
勇太は子供で、デッカードの気持ちを”知らない”だけだ。
美空は知っている。ただそれだけの違い。

「デッカードは気を使って、わざと負けたんでしょ?」
「!…見ていないのに、何故分かるんだ?」
「だってロボット犯罪の抑止力として存在しているのに、業務用ワークボットに負けてたら設計どうした!話にならん!ってなるでしょ?」

第一ドクトル・ガウスとの戦いで違法改造されているロボットに一対一で勝っている。
ちょっと落ち着いて考えたら分かるよと伝えた。

「勇君はデッカードが、友達が取られちゃうって思ったんじゃないかな?」
「そう、なのだろうか」
「たぶん。まぁ想像だけどね」
「……私は、君達以外に友達がいない」
「う、ん…ご近所さんと話してどうだった?」
「明るくて、気さくないい人たちだったよ」
「よかった」
「彼等とも、BP-300シリーズとも、友達に…仲間になれるだろうか?」

だが同じロボットでは、誰も居ない。
その孤独が彼を苛むのか。
それとも、生まれた心が彼を苛むのか。

(深く考えたって、分かんないもんは分かんないか)

「私は、どうすればいい?」
「…とりあえず」
「?」
「勇君と話し合って仲直りしてね」

話はそれからだ。

「そうだな…明日になったら、勇太に謝っておこう」
「話さないと分からないこととかあるからね」
「あぁ。ありがとう美空」

明日やることが決まったところで、時計を見る。もう10時を回っていた。
美空も自分の家へと戻り、就寝するのだった。