翌朝。
「おはよう!勇太!」
「フンッ!」
「勇太…昨日のことまだ怒って…」
「はぁ〜……」
昨日のことを心配していた美空は、朝起きて学校に行く前に友永家に寄った。
しょぼんとした声色で名を呼ぶデッカード。
そしてあいかわらず膨れ面の勇太に耐え切れず美空は目を覆った。いろんな意味で。
しかし間を取り持つ前に、勇太の家から聞こえた悲鳴に驚く。
「キャーーー!!」
「え?」
「あずき姉ちゃん!?」
「くーちゃん!二人とも大丈夫!?」
二人は家に駆け込む。
リビングへ入ると、そこは大騒動。
「何これーー!?」
「知らないわよぉ〜!」
部屋中のあらゆる電子機器から強い電気が漏れて、中にはコンセントが刺さっていないのに勝手に動いているものもあった。
「うわぁ〜…っと、活きが良いなぁ」
「冗談言ってる場合じゃないわよぉっ!」
「ごめんごめん」
音楽プレーヤーから吐き出されたCDを避けながら言うと、くるみから鋭いツッコミを受ける。
また、この現象は友永家だけではないようだ。
家の外からデッカードに呼ばれ彼の元へ行くと、大きな悲鳴があちらこちらから聞こえる。目線の先の家から掃除機が飛び出してきたため美空は現実逃避で目をそらした。
(自分の家帰りたくないな…)
きっと同じように荒れていることだろう。
「ウチだけじゃないんだ…一体」
「私も、僅かだが感じる」
「何を?」
「未知の電波だ。それが、電子機器に影響を及ぼしているんだ…ん!?」
「どうしたの?」
「電波が強くなった!」
美空は警視庁と連絡を取ろうと警察手帳で通信を試したが、ノイズが激しく聞き取れない。
これでは被害状況が正確に把握できず指示も仰ぐことができない。
そうこうしている間に、3人に向かって何かが物凄い勢いで近づいてきた。
「な、なんか来るよぉ!」
「止まれ!止まらないと打つぞ!」
砂煙の中から現れたのは、赤色の作業用ワークボット。
昨日見た親方さんの電吉だった。視認したデッカードは構えていた拳銃の銃口を下げてしまう。
しかし怪電波で操られている作業用ワークボットは容赦ない。
迫って来たままの勢いでデッカードを殴り倒した。
「うわぁあ!」
「あ!どうしたんだよっデッカード!?」
「デッカード!大丈夫!?」地面に倒れた彼を心配し声をかけると、デッカードに損傷は無く、立ち上がった。
騒ぎを聞きつけた友永姉妹とご近所さん達も暴れている作業用ワークボットが電吉だと気づいており、親方さんと糸畑さん達は叫んだ。
「電吉を、壊さずに止めてくれぇええ!!」
「私からも頼むでございますです」
「まだ50回もローンが残ってんだから壊しちゃダメよ〜っ!」
「49回だ!べらぼうめぇ〜っ!」
「そんなに変わりは無いでしょう…」
パト吉、もといデッカードに声援が送られる。
勇太は気づいた。
「そうか、デッカードはみんなの気持ちが分かってるんだ!」
デッカードは、親方さんが大事にしていた電吉の攻撃を、周りに被害が出ないよう腕で受け止めている。
「でもデッカードの装備は拳銃しかない。どうやって電吉を止めるか…」
引き止めておくことしか手立てが無いのか。
そう美空が考え始めていた時、親方さんが声を上げた。
「パト吉ー!お前さんの気持ちはよぉ〜く分かった!いいから電吉を壊しちまってくれぇ!」
「親方さん…」
「いいんですか?」
「し、しかし後50回のローンが」
「49回でいっ!」
「気ぃ使うなんざ100年早いぜぃ!スパーッとやってくんない!べらぼうめぇ!」
「お、親方さん…すみませんっ!!」
修理費よりも、デッカードが自分達のために動いている姿に心動かされたのか。
親方さんはデッカードに電吉を破壊するよう頼む。
デッカードは一言謝ると後方に飛び上がり距離をとりつつ電吉に向けて発砲した。
放たれた弾丸は電吉の動力コードを寸分違わず打ち抜き、行動不能にする。
「で、電吉…」
「大丈夫。動力コードだけを打ち抜いたんだ」
「すいません。電吉君は修理が必要です」
「なぁに良いってことよ!ローンが一回増えたと思えば安いもんだぜ!ありがとよ、パト吉!」
美空はほっと体の力を抜いた途端。
ピリリリリ!ピリリリリッ!
「!」
警察手帳が鳴る。
それぞれ自分の警察手帳を見れば冴島総監が画面に映っている。
「冴島総監。そちらは大丈夫ですか」
「あぁ。こちらは今、怪電波の発生源を特定したところだ。勇太君、美空君。すぐ来てくれ」
「「了解!」」