「デッカードッ!」
(3対1で勝てるわけがない!)
美空は焦燥を感じていた。
【あのアニメ】でも今でも、デッカードはコントロールを奪われないでいたが。それでも彼は苦しんでいる。そしてきっと。
(あの3人も苦しんでる…!)
身体の不快感を押して彼女は走り出した。
彼女が掴んだのは、アタッシュケースに入っていたもう一枚の電波遮断シート。
「美空お姉ちゃん!?」
「待ちたまえ!危険だ美空君!」
「彼等が苦しんでるのに待ってられません!」
デッカードがダメなら自分達でやるしかないでしょう!
そう叫び美空は左手に持った電波遮断シートを翻しながら、脇目も振らずにひた走る。
動きに気づいたガイゾナイトはデッカードへの攻撃を止めないものの、彼女へ興味を示していた。
そのチャンスを生かして、彼女は。大きく振りかぶった。
「これでも食らえできそこないテトラポットォォォオオ!!」
「!?」
彼女が渾身の力を込めて投擲した物。それは、
「「「け、警察手帳ーーー!!?」」」
怪電波により液晶画面が大破していた警察手帳だった。直線状に鋭く進んでいくそれは、軌道の先にいたガイゾナイトの大きな目に見事命中。
開くようになっている警察手帳は、蝶番の部分が破損し真っ二つ。遠めにそれを見た冴島総監は悲鳴を上げた。
「よしっ!」
「じゃなぁあい!」
「すみませえええん!」
だがこれで攻撃と怪電波が止み、美空は勢いを殺さず走り出す。
(このままシートをっ!)
しかしそれはできなかった。
ガイゾナイト(若干涙目)が怪電波を再度発し始め、廃棄物を飛ばしてきたからだ。
「えええええっ!?」
「美空!」
「わああこっちくんなーー!」
さらに、怪電波に操られたBP-300シリーズの3体のうち1体が、美空に攻撃しようと迫る。
大きく振りおろされる腕を必死で掻い潜る美空。
「ぎゃーー!」
「お姉ちゃん!」
「勇君へループッ!」
なかなか掴まらない美空に焦れたのか、ガイゾナイトは山のようにある廃棄物を怪電波で融合させ、巨大なロボットを作り上げた。
美空のヘルプコールに勇太はデッカードをジェイデッカーに合体させようとしたが、警察手帳は壊れていて命令ができない。
「ごめん美空お姉ちゃん!警察手帳がー!」
「そうだったああ!!」
「こうなったら我々の手で、電波遮断作戦を実行するのだ!」
「早くしてっ、て?…うっ、あ!?」
「美空お姉ちゃん!?」
操られたブレイブポリスの迫る腕に気を取られ、彼女は積まれた廃棄物の上でバランスを崩す。追い討ちを掛けるようにガイゾナイトの操る浮かんだ廃棄物の機械が、美空の身体に直撃した。
鈍い痛みを耐える美空は、何かに掴まろうと懸命に左手を伸ばしたが、そのまま廃棄物の山の上から落ちた。
「お姉ちゃんーーー!!!」
「美空!!」
「…」
(いってえええええ……っ!)
全身の痛みに美空は声も出ない。しかし意識ははっきりとしていた。
全身の傷はおそらく擦過傷がほとんどだろうと美空は推察する。
早く起きなければ。
そう思い目を開けると、予想だにしない光景が飛び込んできた。
「え?」
「…」
目の前には、怪電波によって操られ美空を追い回していたブレイブポリスの姿が。
固まる美空。動かない"彼"。彼の手は美空の身体の下にあった。
「た、助けてくれたの!?」
「…」
「ありがとう。あの…いでっ!」
立ち上がろうとした彼女はその場にうずくまってしまう。
何事かと自分の足を見れば、右足首が変色し異様に腫れていた。
あまりの痛さに息が荒くなるが。
「我慢、がまっ、ん…」
(いかなくちゃ)
皆が頑張ってるんだから。
美空は立ち上がり、彼にお願いした。
「みんなのところに連れて行ってくれる?」
「…声紋確認。了解」
「へへっ、ありがとう」
電波遮断シートが頭に引っかかっている彼に。